セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓(基礎)1

タイトル 消P-158:

分子標的治療を目的とした膵癌Protein Kinase D (PKD) signal機構の解明

演者 松尾 洋一(名古屋市立大・消化器外科)
共同演者 越智 靖夫(名古屋市立大・消化器外科), 安田 顕(名古屋市立大・消化器外科), 高橋 広城(名古屋市立大・消化器外科), 若杉 健弘(名古屋市立大・消化器外科), 石黒 秀行(名古屋市立大・消化器外科), 高山 悟(名古屋市立大・消化器外科), 舟橋 整(名古屋市立大・消化器外科), 佐藤 幹則(名古屋市立大・消化器外科), 岡田 祐二(名古屋市立大・消化器外科), 竹山 廣光(名古屋市立大・消化器外科), S.  Guha(University of Texas)
抄録 【目的】膵癌に対してGemcitabineが広く使われるが,その効果は満足のいくものではなく新規薬剤の開発は急務である.Protein Kinase D (PKD) はserine/threonine kinase signalに関与することにより細胞の増殖・成長に関与するといわれている.しかし膵癌の増殖・血管新生に関わるPKDの具体的な役割と,その抑制による抗腫瘍効果は明らかでない.PKDの分子生物学的特徴の解明と低分子化合物阻害剤(small-molecule inhibitor of PKD: smiPKD)の抗腫瘍効果を検討した.【方法】1)Tissue micro arrayで正常膵と膵癌におけるpS916-PKDの発現の差異を検討した.2)Panc-1 mock, Panc-1 PKD (PKD過剰発現株)およびPanc-28 shPKD(PKD低発現株),Panc-28 mockを作成して,膵癌の増殖,浸潤,血管新生能に対するPKD signalの関与を検討した.3)ヌードマウスを用いた膵癌同所移植モデル(Panc-1-luc)を用いて,smiPKD(PKD低分子化合物阻害剤)の抗腫瘍効果を検討した.4)膵癌に対するsmiPKDの増殖抑制効果をKi-67 assay,Tunnel assay,MVD countで評価した.【結果】1)pS916-PKD発現は,正常膵に比べて膵癌患者で有意の強発現していた(91% vs 22%).2)PKD高発現株は,colony形成能,浸潤能,およびHUVECの管腔形成能が低発現株にくらべて有意に高かった.3)smiPKDの経口投与(80 mg/kg oral daily)により,コントロールに比べて3週目から有意に腫瘍は縮小し,最終的には58%の腫瘍抑制効果を認めた. 4)ki-67 assayで,proliferation indexはsmiPKDにより52%減少し,TUNEL assayでは58%のapoptosisの亢進を認めた. smiPKDによりMVDは60%減少し,smiPKDの抗腫瘍血管新生効果も示唆された.【結語】PKD signalは膵癌のapoptosisおよび腫瘍血管新生に重要な働きをしており,新たな膵癌分子標的治療の標的になる可能性が示唆された.
索引用語 膵癌, PKD signaling