セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓(基礎)1

タイトル 消P-161:

胸管結紮離断ラットにおける膵島面積の増大とインスリン分泌能の上昇

演者 名木野 匡(山形大・消化器内科)
共同演者 横澤 潤二(山形大・消化器内科), 矢尾板 孝夫(山形大・消化器内科), 吉澤 和哉(山形大・消化器内科), 岩野 大輔(山形大・消化器内科), 佐々木 悠(山形大・消化器内科), 佐藤 剛司(山形大・消化器内科), 西瀬 祥一(山形大・消化器内科), 武田 弘明(山形県立中央病院・内科), 河田 純男(兵庫県立西宮病院), 上野 義之(山形大・消化器内科)
抄録 【目的】膵β細胞に作用してインスリンの合成分泌を亢進させるホルモンをインクレチンと呼び、これまでglucose-dependent insulinotropic polypeptide(GIP)とglucagon-like peptide-1(GLP-1)の2つが報告されている。両者とも主に腸粘膜で合成され門脈と腸リンパ管に分泌される。今回、我々は腹腔内の腸リンパ管の結紮離断が糖代謝および膵β細胞に与える影響について検討した。
【方法】生齢10週の雄SDラットを用い、麻酔下に開腹し胸管を乳び槽よりも上部で結紮、離断し閉腹した(結紮群)。また、結紮、離断せずに閉腹したsham群を対照とした。処置1、2週後に体重を測定し、絶食下で採血を施行し血液生化学を測定した。また、処置2週後に経口グルコース負荷試験(OGTT)を施行すると共に膵組織を採取し、抗インスリン抗体を用いて免疫組織化学を行い、更に組織中のインスリン量を測定した。
【結果】体重および血液生化学は、処置後1、2週とも両群間に差は認めなかった。免疫組織化学では、膵腺房細胞およびランゲルハンス島あたりの抗インスリン抗体陽性細胞(β細胞)の占める面積はいずれも結紮群において増加した(p<0.05, p<0.01)。膵組織中のインスリン量はsham群193.8±23.4 ng/mg tissueに対し結紮群283.3±31.8 ng/mg tissueで増加した(p<0.05)。OGTTでは、結紮群はsham群に比してインスリン分泌が増加した(15分値で結紮群は4.12±0.57 ng/ml、sham群は1.95±0.28 ng/ml )(p<0.01)。また、GIPは60分値で結紮群が低値を示し(p<0.05)、GLP-1は60分値まで差を認めなかったが、90分値以降で結紮群が高値を示した。
【結論】腸リンパ管の結紮により膵β細胞および組織中インスリン量が増大し、糖摂取後のインスリン分泌能が上昇する事が示された。これら変化は摂食後に長く続く血中GLP-1の上昇に起因する可能性が考えられた。
索引用語 腸リンパ管, インクレチン