セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓(基礎)2

タイトル 消P-165:

膵癌の間質浸潤を抑制する方法

演者 富澤 稔(国立下志津病院・消化器内科)
共同演者 篠崎 文信(国立下志津病院・放射線科), 杉山 隆夫(国立下志津病院・リウマチ科), 山本 重則(国立下志津病院・小児科), 末石 眞(国立下志津病院・リウマチ科), 吉田 孝宣(国立下志津病院・内科)
抄録 【目的】膵癌は早期から間質に浸潤するため予後が悪い。Insulin-like growth factor(IGF)-1はIGF-1レセプターIGF-1Rに結合して下流のphosphatidyl inositol-3 kinase(PI3K)またはmitogen-activated protein kinase(MAPK)を介して細胞の増殖と分化に関与する。無血清培地は間質のモデルとして用いられる。そこで今回我々は膵癌細胞株を用いて無血清培養におけるIGF-1Rの関与を解析し間質浸潤の抑制を試みた。【方法】ヒト膵癌組織(BioChain社)に対して抗IGF-1R、リン酸化IGF-1R(pIGF-1R)抗体を用いて免疫染色を行った。膵癌細胞株(MIA-paca2, PANC1, NOR-P1, PK-45H, PK-1, PK-59, KP4)を無血清培地で培養し細胞数を計測した。無血清培地で膵癌細胞株を培養してウェスタンブロットにて解析した。NOR-P1を無血清培地で培養し、培地にpicorpodophyllin (PPP、IGF-1R阻害剤)、LY294002 (PI3K阻害剤)、またはPD98059 (MAPK阻害剤)を添加してscratch assayにて浸潤能を解析した。【成績】間質に存在する膵癌細胞はIGF-1R陽性であった。無血清培地ではNOR-P1が増殖能を有していた。無血清培地では全ての細胞株でIGF-1RおよびpIGF-1R陽性であった。IGF-1Rの下流であるPI3K、MAPKの発現とリン酸化は細胞株により異なっていた。NOR-P1の移動能は阻害剤を添加しない群に対してPPP、LY294002、PD98059添加群ではそれぞれ5.1 ± 1.2% (P<0.05)、0% (P<0.05)、66.8 ± 7.7% (P<0.05)であった。【結論】間質に存在する膵癌細胞はIGF-1R陽性なので膵癌の浸潤に関与している可能性がある。無血清培地では膵癌細胞株はIGF-1Rが何らかの作用をしている可能性があり、下流の刺激伝達系は細胞株によって異なると考えられる。NOR-P1は間質浸潤する膵癌細胞のモデルと考えられ、IGF-1R、PI3K阻害剤を用いると浸潤能を抑制することが可能と考えられた。
索引用語 insulin-like growth factor-1 receptor, scratch assay