セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓(基礎)2

タイトル 消P-170:

膵星細胞は膵癌細胞の癌幹細胞様形質を増強する

演者 滝川 哲也(東北大・消化器内科)
共同演者 正宗 淳(東北大・消化器内科), 濱田 晋(東北大・消化器内科), 廣田 衛久(東北大・消化器内科), 菊田 和宏(東北大・消化器内科), 鈴木 範明(東北大・消化器内科), 粂 潔(東北大・消化器内科), 管野 敦(東北大・消化器内科), 海野 純(東北大・消化器内科), 佐藤 賢一(宮城県立がんセンター研究所・がん幹細胞研究部), 下瀬川 徹(東北大・消化器内科)
抄録 【目的】近年、癌の再発・転移および治療抵抗性の獲得には癌幹細胞と呼ばれる少数の細胞集団が寄与していることが報告されている。癌幹細胞は通常の組織幹細胞同様に自己複製能や多分化能を有しており、それらはニッチと呼ばれる微小環境によって制御されていると考えられている。一方、膵星細胞は膵癌における線維化・癌間質形成に中心的な役割を果たしており、膵癌の増殖・転移能や治療抵抗性を増強することも報告されている。このような知見は膵星細胞がニッチ形成などを介して、癌細胞の幹細胞様形質の獲得や維持に寄与している可能性が考えられる。そこで、膵星細胞が癌幹細胞様形質に与える影響をin vitroおよびin vivoで評価した。【方法】膵星細胞株として、SV40 large T antigenおよびhTERTをレトロウイルスベクターを用いて遺伝子導入して不死化したヒト膵星細胞株を用いた。1)In vivoでの検討として、膵星細胞が腫瘍形成能に与える影響をヒト膵癌細胞株ASPC1単独あるいは膵星細胞株とともにICR nude mouse背部に皮下接種して評価した。2)In vitroでの検討として、ヒト膵癌細胞株ASPC1またはSUIT-2の膵星細胞との共培養下でのspheroid形成能と癌幹細胞・膵progenitor細胞・ES細胞での高発現が報告されているABCG2、Nestin、LIN28の発現の変化をリアルタイムPCRにて評価することで行った。【成績】膵星細胞とともに接種した皮下腫瘍はASPC1単独での接種に比較して有意に腫瘍径の増大がみられた。膵星細胞との共培養により、膵癌細胞株ASPC1およびSUIT-2のspheroid形成能は増加し、EMT誘導性転写因子であるSnailの発現とABCG2、Nestin、LIN28の発現増加が確認された。【結論】膵星細胞はin vivoin vitroでの癌幹細胞様形質を増強する因子であることが確認された。膵星細胞と癌細胞との相互作用は癌幹細胞特異的な治療標的となる可能性が考えられた。
索引用語 膵星細胞, 膵癌