セッション情報 シンポジウム6(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)

画像強調内視鏡の現状と今後の展開-咽頭から十二指腸まで

タイトル 内S6-9:

早期胃癌NBI拡大内視鏡診断におけるH. pylori感染状態の関与

演者 小林 正明(新潟大医歯学総合病院・光学医療診療部)
共同演者 水野 研一(新潟大医歯学総合病院・光学医療診療部), 橋本 哲(新潟大医歯学総合病院・光学医療診療部)
抄録 【背景】近年、早期胃癌に対する画像強調・拡大内視鏡観察の有用性が報告されているが、時に質的・境界診断に苦慮する病変を経験する。我々は、昨年の本学会で、H. pylori (Hp)除菌後胃癌の中には、炎症の改善と上皮の成熟分化に伴い、診断困難な病変があることを報告した。今回は、除菌治療歴のない症例におけるHp感染および背景粘膜の炎症・萎縮の状態とNBI拡大診断の困難性との関連をend pointとし検討を行った。【方法】対象は2007~2011年にESDを行った全ての早期胃癌症例(n=643, 術後胃、遺残病変、適応外病変を除く)で、全例に詳細なNBI拡大観察を行った。除菌歴を確認した87症例を除き、血清抗体を含む複数の検査でHp陰性であった61症例78病変を陰性群(N)とした。Hp陽性で、年齢・性別をマッチさせた74症例78病変を陽性群(P)とし、case-control studyを行った。NBI拡大診断に習熟した3名が、記録画像を個別に見直し、微小血管像が不明瞭で、表面微細構造の多様性や不規則性に乏しく、病変一部で境界を追えないものを胃炎類似病変と定義し、2名以上の一致で診断困難性ありとした。背景粘膜はペプシノーゲン(PG)法で評価した。【成績】(1)背景因子は、a. 肉眼型(I,IIa:IIc,IIa+IIc)はN(32:46), P(40:38)、b. 局在(L:M,U)はN(23:55), P(34:44)、c. 大きさ(≦20:>20mm)はN(45:33), P(48:30)、d. 組織型(pap, tub1のみ:tub2, por混在)はN(67:11), P(59:19)、e. PG法(陰性:陽性)はN(38:40), P(13:65)で、PG法のみ有意差を認めた。(2)診断困難性は、N(16, 21%), P(11, 14%)で差はなかった。(3)Hp感染の有無と背景因子a-eの多変量ロジスティック回帰分析では、PG法陰性のみ診断困難性に相関した(OR: 12.7, 95%CI: 4.2-38.2, p<0.0001)。(4)胃炎類似病変は乳頭・顆粒状(48%)あるいはpit混在の顆粒状(44%)の表面微細構造を示し、明瞭なwhite zoneが特徴的であった。【結論】除菌歴がなくとも、背景粘膜の炎症・萎縮が乏しい症例では、周囲粘膜に類似したNBI拡大所見を示し診断困難な病変がある。
索引用語 除菌, ペプシノーゲン法