セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓(急性膵炎)

タイトル 消P-188:

術後膵炎を予防するためにはhigh risk症例のどのような症例に膵管ステントを挿入すればよいか?

演者 竹中 完(神戸大・消化器内科)
共同演者 塩見 英之(神戸大・消化器内科), 増田 充弘(神戸大・消化器内科), 藤田 剛(神戸大・消化器内科), 久津見 弘(神戸大・消化器内科), 早雲 孝信(神戸大・消化器内科), 東 健(神戸大・消化器内科)
抄録 [背景/目的] 安全確実なERCPを行うべく当院では,1)十分な鎮静のもと,2)全例CO2送気で検査を行っている.3)ガイド交換の利便性,処置時間の短縮化を踏まえてカニューレはMTWカテーテルを使用し,挿管困難例には術者交代,細径カニューレへの変更等で対応している.4)検査後は絶食補液下に蛋白分解酵素阻害剤と抗生剤を投与し,腹部症状,バイタルサイン,血清膵酵素値の評価をもとに膵炎の予防,早期発見に努めている.しかしそれでもなお術後膵炎は認められる.術後膵炎の予防にhigh risk症例への脱落型膵管ステント(PSDS:pancreatic spontaneous dislodgement stent)の留置が有効であることが知られているが,全てのhigh risk症例に留置されることはなく,どのような症例にどの程度有効であるかも不明である.今回我々はrisk因子別にPSDSの膵炎予防効果について比較,検討を行ったので報告する.[対象/方法]当院で2006年~2009年にERCPを施行された,連続1131症例を対象とした.術者により膵炎のhigh risk症例と考えられ,安全に留置可能と判断された105例(9.3%)がPSDS適応症例とされた.バイアスの調整には,対象がある群に属する確率を数値化し,ランダム化されていない群間での違いを調整する傾向スコア解析を用いた. [結果] 全体の膵炎発生率は8.4%(95/1131)であった.PSDS群での膵炎発生率は6%(6/105)であり,マッチングされた非PSDS群の18%(19/105)と比較して有意に膵炎予防効果が認められた(p=0.02, OR 0.32, 95% CI 0.12-0.77).リスク因子別の解析では,膵炎既往症例に有意な膵炎予防効果が認められ,そのORは全体のORよりも低く,信頼区間も1以下であった(p=0.01, OR 0.11, 95%CI 0.01-0.76).挿管困難例(要30分以上)もOR 0.13と,統計学的には有意ではないが,PSDSが有効な傾向が認められた(p=0.08, OR 0.13, 95%CI 0.01-1.14).[結論] ERCP後膵炎のhigh risk群の中でも,膵炎既往症例と挿管困難例はPSDSにより特に高い膵炎予防効果が期待されると考えられた.
索引用語 ERCP後膵炎, 膵管ステント