セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓(腫瘍)2

タイトル 消P-205:

膵癌細胞増殖における(プロ)レニン受容体の役割

演者 藤森 崇行(香川大附属病院・消化器・神経内科)
共同演者 柴山 弓季(香川大・薬理学), 西山 成(香川大・薬理学), 森 宏仁(香川大附属病院・消化器・神経内科), 正木 勉(香川大附属病院・消化器・神経内科)
抄録 【目的】(プロ)レニン受容体(以下、(P)RRと略)は、350個のアミノ酸から構成される1回膜貫通型タンパク質で、脳、心臓、腎臓、肝臓、骨格筋、平滑筋、脂肪組織、膵臓、副腎、胎盤など多くの重要臓器に広く分布している。最近の研究から、(P)RRはV-ATPaseのaccessory subunitであることが明らかとなった。V-ATPaseは主に細胞内のpHを調節する役割を持ち、外科的切除によって得られた膵癌組織標本ではV-ATPaseの発現が顕著に増大しており、さらに増殖や転移能を活性化することが報告されている。しかしながら、(P)RRがV-ATPaseを介して膵癌細胞の増殖にどのように寄与しているかどうかについては、明らかとなっていない。そこで(P)RRが膵癌細胞の増殖に影響を与えるどうかの検討を行った。【方法】膵癌細胞株PK-1を用い、1)ウエスタン・ブロッティングによってWnt signaling pathwayを構成するLRP6、β-cateninの活性化を評価、2)WST-1 assayによって細胞分裂能力を定量化、3)FACSを用いたPI(Propidium Iodide)染色によってSub G1期細胞(アポトーシス誘導細胞)の同定を実施した。【結果】細胞増殖を促進するWnt3a (150 ng/ml)でPK-1を刺激した結果、LRP6、β-cateninの活性化が著しく促進された一方で、(P)RRおよびV-ATPase siRNAによる処理では有意に抑制された。さらに(P)RRをsiRNAによってknockdownした結果、V-ATPaseのVo subunitの一部であるATP6VOC発現の低下が認められた。さらにWST-1 assay においても前述の2つのsiRNA処理によって細胞分裂能力が低下した。また、PI染色を施した後にFACSを用いて解析した結果、(P)RRおよびV-ATPase siRNA処理をした細胞における分裂能力の低下は、細胞死から生じていると分かった。【結論】 (P)RRがV-ATPaseを介して膵癌細胞の増殖に寄与していることが明らかとなった。
索引用語 膵癌, プロレニン受容体