セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓(腫瘍)6

タイトル 消P-242:

インスリン様増殖因子受容体(IGF-IR)を分子標的としたk-ras変異を伴う膵癌に対する治療の試み

演者 足立 靖(札幌医大・1内科DELIMITER札幌しらかば台病院・消化器科)
共同演者 山本 博幸(札幌医大・1内科), 井伊 正則(札幌医大・1内科), 大橋 広和(札幌医大・1内科), 須河 恭敬(札幌医大・1内科), 能正 勝彦(札幌医大・1内科), 有村 佳昭(札幌医大・1内科), 遠藤 高夫(札幌しらかば台病院・消化器科), 篠村 恭久(札幌医大・1内科)
抄録 【目的】近年、各種増殖因子受容体に対する分子標的薬が開発され、臨床応用されている。抗上皮増殖因子受容体(EGFR)抗体であるcetuximabは大腸癌に対する第一選択薬となりつつあり、erlotinibは膵癌に対して効能が認められた。一方、K-ras遺伝子に機能獲得性変異が起こると癌の伸展に繋がり、EGFR抗体の効果は限定的になる。K-ras変異は大腸癌の40-50%、膵癌の70-90%に認められることから、さらなる治療の開発が求められている。膵癌においてIGF/IGF-IRは増加しており、IGF-IRは次の標的として注目され、第3相試験も始まっている。我々はこれまでIGF-IR阻害にdominant negativeを用いてきたが、今回IGF-IR抗体を用いた。IGF-IR阻害の膵癌に対する臨床応用を目指し、変異k-rasの影響を解析した。【方法】k-ras変異陰性株BxPC3, 変異陽性膵株MIAPaca2等の膵癌細胞株を用いた。膵癌に対するIGF-IR抗体figitumumabの影響、増殖阻害効果、アポトーシス誘導効果について検討し、下流シグナルに及ぼす影響を評価した。さらに、マウスにおける抗腫瘍効果を検討した。【結果】抗IGF-IR抗体は受容体のリン酸化および下流シグナルを抑制した。IGF-IR阻害は細胞増殖を抑制し、アポトーシスを誘導した。さらに、抗IGF-IR抗体はgemcitabineによる抗腫瘍効果を増強した。Figitumumabはマウス皮下腫瘍の発育進展を抑制し、抗癌剤との併用により著明な抗腫瘍効果を発揮したが、マウスの体重・血糖に影響しなかった。IGF-IR阻害はk-ras変異の有無に影響を受けなかった。【結論】k-ras変異型を示す膵癌において、IGF-IRは標的となりえた。IGF-IR分子標的治療は、単独使用においても、抗癌剤との併用においても効果を認め、大きな可能性を持つと期待された。
索引用語 IGF-IR, k-ras