セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓(症例報告/その他)

タイトル 消P-250:

早期慢性膵炎の臨床像―早期から確診に進行した2症例の比較

演者 廣田 衛久(東北大・消化器内科)
共同演者 下瀬川 徹(東北大・消化器内科), 菅野 敦(東北大・消化器内科), 粂 潔(東北大・消化器内科), 菊田 和宏(東北大・消化器内科), 濱田 晋(東北大・消化器内科), 海野 純(東北大・消化器内科), 正宗 淳(東北大・消化器内科)
抄録 【背景・目的】2009年に日本の慢性膵炎診断基準が改訂され、早期慢性膵炎を診断できるようになったが、早期慢性膵炎患者の臨床像や臨床経過について詳細な報告はない。我々は、異なる臨床経過を辿り早期から確診へと進行した慢性膵炎2症例を経験したので報告する。【症例】症例1は、40歳代から計4回の特発性急性膵炎を繰り返し、64歳で早期慢性膵炎、その5年後の69歳で膵に多発する石灰化を認め特発性慢性膵炎の確診へ進行した男性患者である。早期慢性膵炎の画像診断基準は、ERP所見、EUS所見の両者を満たした。飲酒歴は1か月1回以下の機会飲酒のみ。喫煙は1日タバコ20本を継続している。症例2は、20歳代からアルコール1日60gから120g摂取する大酒家の男性患者である。喫煙も1日タバコ20本を継続している。30歳代で2型糖尿病を発症したが放置していた。彼は1度も急性膵炎や腹痛発作の既往がなかった。57歳時に糖尿病性ケトアシドーシスで当院入院時、膵尾部に嚢胞を指摘され、精査目的に当科へ紹介となった。彼は飲酒歴と血中膵酵素の異常値及びEUSによる画像所見から早期慢性膵炎と診断された。ERPは同意を得られず施行しなかった。退院後、彼は再三の断酒指導にも関わらず飲酒を再開し、1年後の58歳に膵に多発性の石灰化が出現しアルコール性慢性膵炎の確診へ進行した。【考察】現在、慢性膵炎の病態形成の発端として急性膵炎が必須であることが提唱されている(Sentinel Acute Pancreatitis Event(SAPE)仮説)。また、アルコール性再発性急性膵炎患者は、膵実質壊死とその後の線維化を繰り返しながら慢性膵炎へ進行することが提唱されている(necrosis-fibrosis仮説)。症例1は、再発性急性膵炎から慢性膵炎へ進行した症例で、既存の仮説を裏付ける。ところが、症例2の病態は既存の仮説では説明できない。早期慢性膵炎の臨床経過を解析することにより、これまで明らかにできなかった慢性膵炎が形成される病態への理解が深まることが期待される。
索引用語 早期慢性膵炎, アルコール性慢性膵炎