セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓(その他)

タイトル 消P-262:

膵動静脈奇形に対する新たな治療戦略

演者 坂田 直昭(東北大・肝胆膵外科)
共同演者 後藤 昌史(東北大未来科学技術共同研究センターDELIMITER東北大病院・移植・再建・内視鏡外科), 元井 冬彦(東北大・肝胆膵外科), 林 洋毅(東北大・肝胆膵外科), 中川 圭(東北大・肝胆膵外科), 水間 正道(東北大・肝胆膵外科), 山谷 英之(東北大病院・移植・再建・内視鏡外科), 長谷川 豊(東北大病院・糖尿病代謝科), 澤田 正二郎(東北大病院・糖尿病代謝科), 吉松 軍平(東北大・肝胆膵外科), 伊藤 経夫(東北大未来医工学治療開発センター), 菅野 敦(東北大病院・消化器内科), 廣田 衛久(東北大病院・消化器内科), 石垣 泰(東北大病院・糖尿病代謝科), 力山 敏樹(東北大・肝胆膵外科), 江川 新一(東北大・肝胆膵外科), 片桐 秀樹(東北大病院・糖尿病代謝科), 下瀬川 徹(東北大病院・消化器内科), 里見 進(東北大病院・移植・再建・内視鏡外科), 海野 倫明(東北大・肝胆膵外科)
抄録 膵動静脈奇形(AVM)は異常血管に起因する出血や膵炎による腹痛発作を繰り返す稀な疾患である。出血や炎症が強くコントロールできない場合には、異常血管の認められる膵臓領域の切除が選択される。膵全体に病変が及んでいる場合、あるいは病変が多発している場合には膵全摘術を選択せざるを得ないことも多い。自家膵島移植は良性の膵疾患でありながら膵全摘術を行った患者に対し、自己の膵島を体内に戻すことにより、不安定な膵性糖尿病を回避することができる治療法である。われわれはこれまでに7例のAVM症例の治療経験があり、うち3例に膵全摘術と自家膵島移植を行った。主訴はいずれも腹痛で急性膵炎を合併していた。年齢の中央値は46歳(39-59)でいずれも男性であった。自家膵島移植を行わなかった4症例(症例1-4)は異常血管の局在が限局しており、2例に膵体尾部切除術、1例に膵頭十二指腸切除術、1例に膵頭十二指腸切除術+膵体尾部切除術が施行された。残りの3例(症例5、6、7)はいずれも2領域以上に異常血管が見られ、本学の倫理委員会の承認のもと膵全摘術と自家膵島移植を施行した。移植膵島数は36万、12万、23万膵島で、症例6に門脈塞栓、門脈圧亢進症といった重篤な合併症が見られたものの、他の2例(症例5、7)については移植中の門脈圧上昇は軽度で術後の重篤な合併症は見られなかった。この2例は共に少量のインスリン投与で血糖値のコントロールは良好であり、HbA1cの増加は認めるも低血糖発作は見られていない。膵全摘が不可避な膵AVM症例に対して自家膵島移植は考慮されるべき有効な治療選択枝であると考えられる。より安全な手法の確立と、移植成績向上への工夫が必要である。
索引用語 膵動静脈奇形, 膵島移植