セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

食道・咽頭(基礎)

タイトル 消P-264:

Barrett食道形成におけるATOH1発現の関与

演者 玉川 祐司(島根大・2内科)
共同演者 石村 典久(島根大・2内科), 宇野 吾一(島根大・2内科), 石原 俊治(島根大・2内科), 天野 祐二(島根大附属病院・光学医療診療部), 木下 芳一(島根大・2内科)
抄録 【目的】ATOH1(atonal homolog 1)は腸管上皮細胞の杯細胞分化において重要な役割を担う因子である. これまで腸管上皮においてCdx2の誘導によりATOH1が誘導され, 幹細胞を杯細胞へ分化させる重要な因子であることが報告されているが, Barrett食道形成(特にgoblet cell metaplasia)におけるATOH1の詳細な役割に関しては不明な点も多い. 今回, 我々はラット実験モデル(ラット胆汁酸逆流食道炎モデル)を用いて, Barrett食道形成におけるATOH1の発現状況を評価し, 更にCdx2, 腸上皮化生マーカー(MUC2, IAP)発現との関連について検討し, Barrett食道形成への関与について考察した. 【方法】7週齢のWistar雄性ラットを用いて, 食道空腸端側吻合により胆汁酸逆流食道炎モデルを作成し, 下記の項目に関して, 術後8, 16, 24, 32, 48週と経時的変化を検討した. 検討項目は1)病理組織による食道炎, Barrett食道の発生率, 2)real-time PCRによるATOH1, Notchシグナル関連因子(Notch1, Hes1), Cdx2, MUC2, IAPのmRNAレベルでの発現評価, 3)免疫染色による各因子の発現部位とした. 【成績】全てのラットにおいて基底細胞過形成や炎症細胞浸潤を伴った食道炎が認められた. Cdx2陽性・MUC2陽性・IAP陽性の杯細胞を伴ったBarrett食道は術後16週以降に多く認められるようになり, 経時的にBarrett食道の発生率は術後16週; 40%(4/10), 術後24週; 60%(6/10), 術後32週; 80%(8/10), 術後48週; 100%(10/10)と増加し, その範囲も拡大が認められた. mRNA発現レベルにおいて, ATOH1は術後24週において発現量が最大となり, Cdx2やMUC2, IAPの発現量が最大となる術後32週より有意に先行していることが認められた. 更に免疫染色ではATOH1はCdx2陽性細胞, 腸上皮化生(MUC2陽性・IAP陽性)の杯細胞に発現が認められた. 【結論】ATOH1はBarrett食道形成の初期にCdx2や腸上皮化生マーカーより先行して発現が著しく亢進していたことから, Barrett食道の形成に重要な役割を果たしている可能性が示唆された.
索引用語 Barrett食道, ATOH1