セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

食道・咽頭(基礎)

タイトル 消P-268:

アスピリンのラット慢性酸逆流性食道炎に及ぼす影響

演者 中原 憲一(大阪市立大・消化器内科)
共同演者 藤原 靖弘(大阪市立大・消化器内科), 山上 博一(大阪市立大・消化器内科), 谷川 徹也(大阪市立大・消化器内科), 渡辺 憲治(大阪市立大・消化器内科), 渡辺 俊雄(大阪市立大・消化器内科), 富永 和作(大阪市立大・消化器内科), 荒川 哲男(大阪市立大・消化器内科)
抄録 【目的】低用量アスピリンは抗血小板薬として、虚血性心疾患や脳血管障害の1次・2次予防として、その使用頻度が増加している。一方、アスピリンは、消化管粘膜に恒常的に発現しているシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害し粘膜防御機構を統括的に賦括するプロスタグランジン(PG)産生の抑制やアスピリン自体の直接的な細胞傷害作用により消化管粘膜傷害を惹起することが副作用として重要である。最近、低用量アスピリンは食道粘膜傷害を惹起することが臨床的に報告されているが、その発症について詳細な基礎的検討はなされていない。今回、ラット慢性酸逆流性食道炎モデル用いてアスピリンの影響を検討した。【方法】小村らの方法に従い、ラットの前胃を結紮し幽門部近傍の十二指腸を18Frネラトンカテーテルで被覆し、1~3週間後に屠殺した。この食道炎モデルを用いアスピリンの影響を検討するため、アスピリン投与期間は食道炎作成直後より投与群(急性期群:逆流性食道炎発症に与える影響)、慢性食道炎完成後より投与群(慢性期群:逆流性食道炎悪化に与える影響)の2群に分けて検討した。アスピリン投与量は100mg/kg、150mg/kg、300mg/kg経口投与し、100mg/kg皮下投与とした。検討項目は(1)肉眼的病変の程度(2)食道粘膜内PGE2産生量(EIA法)(3)組織学的所見(4)逆流胃液中のアスピリン濃度(5)外因性PGE2投与下での影響、とした。【結果】アスピリン投与群・非投与群で、いずれも肉眼的に食道中下部に白色調粘膜肥厚、潰瘍の形成を認めた。急性期での粘膜傷害面積は急性期群においてアスピリン非投与群にて0.38±0.12cm2、アスピリン投与群において0.59±0.12cm2、慢性期ではアスピリン非投与群にて0.06±0.02cm2、アスピリン投与群では0.13±0.04cm2といずれもアスピリン投与群で有意に増悪を認めた。PG産生量では、アスピリン投与群において有意にPG産生の低下を認めた。【結語】アスピリンは食道PGE2低下を介して食道炎を増悪させることが示唆された。
索引用語 逆流性食道炎, アスピリン