セッション情報 |
シンポジウム7(肝臓学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)
Cohort研究からみたウイルス性肝炎の解明
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タイトル |
肝S7-2:過去3回の調査に見る大阪市あいりん地域におけるHCV感染状況の変遷について
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演者 |
榎本 大(大阪市立大大学院・肝胆膵病態内科学) |
共同演者 |
田中 隆(朋愛病院・内科), 河田 則文(大阪市立大大学院・肝胆膵病態内科学) |
抄録 |
【目的】我々は大阪市あいりん地域でのHCVの感染率が非常に高いことを報告してきた。今回は過去3回の調査より同地域におけるHCV感染状況の変遷につき総括する。【対象と方法】対象はCohort A)1986~91年の検診受診者143人(平均49歳)、Cohort B)1990年のS病院外来受診者281人(平均54歳)、Cohort C)2005~08年のS病院入院患者1,162例(平均57歳)、全例男性である。肝機能検査、肝炎ウイルスマーカーに加え、調査A)B)では感染経路につき詳細に問診した。調査C)は診療録により追跡した。【結果】1)HCV抗体陽性率(%)は、A)30、B)47、C)19であった。約20年前に行われた平均年齢40代、50代を対象とした調査A)B)におけるHCV抗体陽性率は特に高かったが、最近行われた調査C)における60代、70代の陽性率も25%、30%と同等に高かった。調査C)で若年層におけるHCV抗体陽性率(%)はやや低値であった(~39歳/40代/50代 4.8/11/19)。HCV群別判定した105例では1型59%/2型41%であった。2)ALT異常者の割合(%)は、A)27、B)38、C)20であった。HCV抗体陽性率(%)は、ALT異常者において有意に高値であったが、ALT正常者においても、A)16、B)38、C)14と非常に高かった。3)HBs抗原陽性率(%)は、A)2.8、B)5.7、C)2.1、飲酒者の割合(%)は、A)68、B)73、C)55であった。4)感染経路について調査A)では輸血歴、調査B)では輸血歴、刺青歴、売血歴が有意な因子であった。調査C)ではHCV感染者の少なくとも15%に覚醒剤使用歴を認めた。5)調査C)では27例にIFNが投与されたが、SVRまで追跡出来たのは3例であった。HCC20例に対し最も多く選択された治療はTACE(10例)であり、手術(5例)やRFA(2例)の根治治療を行えたのは少数であった。【結論】1)あいりん地域におけるHCV感染率は若年層において低下しているといえ、依然として高値である。2)同地域のHCV感染率はALT正常者においても10%以上である。3)同地域の肝障害にはアルコールの関与も大きい。4)感染経路として、刺青、売血歴、覚醒剤使用が重要である。 |
索引用語 |
あいりん地域, HCV |