セッション情報 シンポジウム7(肝臓学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)

Cohort研究からみたウイルス性肝炎の解明

タイトル 肝S7-3:

C型慢性肝疾患の長期予後とIFN治療のインパクト

演者 山崎 一美(奈良尾医療センター)
共同演者 白濱 敏(長崎県上五島病院), 長尾 由実子(久留米大・消化器疾患情報)
抄録 【目的】C型慢性肝疾患の長期予後を明らかにし、その生命予後にIFN治療はどれほど修飾できるのか検討した。【方法】1990年より地域の全住民(人口2.3万人)を対象にHCV抗体スクリーニングを開始。2007年3月までに17,712名が受診、HCV抗体陽性例は1,343名(7.6%)。このうちHCVRNA陽性でHBs抗原陽性を除外した792例を対象とした。またスクリーニング受診者のうちHCV抗体陰性かつHBs抗原陰性でC型肝炎群各々の生年月日に近似させ、性と年齢を一致させた1,584例を一般住民群とした。また70歳未満で肝硬変・肝癌を合併していなかった482例にIFN治療を推奨し、同意が得られた154例にIFNを導入、これらの症例についても一般住民群と比較して検討。総死亡をendpointとして生存率を算出。また死因も比較した。観察期間中央値は、C型肝炎群11.5年(~21.7年)、一般住民群16.1年(~21.7年)。最終転帰不明例はそれぞれ8.2%と4.5%。【結果】C型肝炎群と一般住民群の生存率は10年各々65.4% vs. 87.8%、20年各々40.8% vs.62.5%、C型肝炎群が有意に低率だった[p<0.001、Hazard risk比0.444(95%CI 0.389 - 0.507)]。観察期間中の死亡例の死因において肝疾患関連死亡の占める割合は、C型肝炎群、一般住民群で各々42.8%、1.5%とC型肝炎群が有意に高率だったp<0.0001)。さらに初診時、肝硬変または肝癌への進展がなく70歳未満であった482例においてIFNの介入効果を検討。IFN非導入群(n=328)の累積生存率は、一般住民群(n=656)より有意に不良だが(p<0.0001)、IFN治療導入群(n=154)では、一般住民群(n=308)と統計的差異を認めなかった。IFN導入はrandomizedされてないが、導入群は非導入群に比しALT基準値以上で男性に偏重していた。【結果】C型肝炎群は、一般住民に比し肝疾患関連死亡の割合が高く生存率は不良だが、肝硬変や肝癌に進展していない70歳以前でIFNを導入すれば、一般住民の生命予後と同等程度にまで生存率が改善できる。
索引用語 HCV, IFN