セッション情報 シンポジウム7(肝臓学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)

Cohort研究からみたウイルス性肝炎の解明

タイトル 肝S7-4:

C型肝炎ウイルス高浸淫地区におけるコホート研究

演者 吉澤 要(国立信州上田医療センター・地域医療教育センターDELIMITER信州大・消化器内科)
共同演者 田中 榮司(信州大・消化器内科), 清澤 研道(長野赤十字病院)
抄録 【背景・目的】当時原因不明の肝炎が多発したため、1985年から10年間にわたり長野県の一山村で、住民検診を中心に調査を行った。この肝炎コホート研究について、経緯、活動内容、成果、地域住民への貢献、その後の経緯について解析する。【経緯・結果】長野県N町において肝炎患者が多発し、A地区とH地区では住民の約20%が肝疾患に罹患していた。このため、1985年にN町、地域保健所、地元医師会、地域の病院および信州大学第二内科で、N町肝炎対策事業協議会を立ち上げ、10ヵ年計画がスタートした。肝炎多発地区と同町の対照地区で小学生以上の全住民に対し、1次検診を行い、要精査例には2次検診を行った。地元病院にて、腹部エコー、CT、肝生検を行い、肝がん1人、肝硬変12人、慢性肝炎88人を診断した。当初の2年間で肝生検は169人に行われ、肝硬変11人、慢性活動性肝炎99人、慢性非活動性肝炎48人であり、非A非B型肝炎と考えられた。1989年、C型肝炎ウイルス(HCV)が発見され、第1世代HCV抗体を測定したところ多発地区32.4%、対照地区2.3%で陽性であり、この地区に多発する肝障害はHCVによるものであることが判明した。A・H地区と、N町他地区の住民において、高齢、手術歴、輸血歴、民間療法およびHBVマーカーがHCV感染と関連していた。多変量解析では、高齢、HBVマーカー、手術歴とともに、民間療法が独立因子として示された。肝硬変・肝がん死亡比の推移は、事業終了後の現在まで、長野県を100とするとA・H地区では400から500台と著明な高値であった。【考察・結論】1992年からは、インターフェロン治療、肝細胞癌の早期発見、治療などが積極的に行われるようになった。住民の意識も変わり、肝炎友の会も結成され、啓発活動を積極的に行うことによって、新たな感染はほとんど起こっていない。行政、地域保健所、地元医師会、地区の病院および信州大学第二内科が長期にわたり協力したことが今回の成果につながったと思われる。
索引用語 C型肝炎ウイルス, コホート研究