抄録 |
【目的】食道T1b,SM2/3癌は手術療法が基本となるが,郭清領域の問題, n(+),Stage IIでの術前化学療法(NAC)の必要性など実際の臨床の現場では苦慮することが多い.【対象と方法】2010年までに当院で胸部食道癌(扁平上皮癌)と診断, 根治術を行い,pT1b(SM2以深)であった119例を病理所見,転帰,長期成績についてretrospectiveに検討した.【結果】1)内訳SM2/3=75/44例.術前EMRを施行したのは12例10%,NACは18例15%(SM2:9例12%,SM3:9例20%).3領域郭清術は61例51%(SM2:28例37%,SM3:33例75%)2)病理所見脈管侵襲は陰性/陽性はSM2:14/61例,SM3:7/37例.脈管陽性率はSM2/3=81/84%.リンパ節転移は51例43%(SM2:25例33%,SM3:26例59%).転移個数はSM2:0/1-3/4個以上=50/22/3例,SM3:0/1-3/4個以上=18/18/8例.転移領域は1/2/3領域=40例78% / 8例16% / 3例6%(SM2 =22/3/0例,SM3=18/5/3例).頚部リンパ節転移は3領域郭清を施行した61例中14例23%に認め,部位がUt以外のものは8例13%.脈管侵襲陰性21例18%(SM2/3=14/7)は全例pN0.3)転帰原病死は21例18%,内訳はSM2/3 = 11例15%/10例23%.再発形式(重複含む)は血行性16例,リンパ行性12例,うち頚部リンパ節再発は9例75%. 脈管侵襲陰性例21例は全例無再発生存.4)長期成績5年生存率は68%,内訳はSM2/3=75%/55%(p=0.040)とSM2において有意に予後良好.リンパ節転移個数別では0/1-3/4個以上=78/62/31%(SM2:0/1-3/4個以上=78/74/33%,SM3:0/1-3/4個以上=73/48/31%).【結語】食道SM2/3癌において,リンパ節転移を認めた43%はStage IIとなり術前化学療法が必要と考えられた. 3領域にリンパ節転移を認めたものは5%,特にMt,Lt病変において頚部リンパ節転移は13%に認め,頚部リンパ節郭清の重要性も示唆された. |