セッション情報 シンポジウム7(肝臓学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)

Cohort研究からみたウイルス性肝炎の解明

タイトル 肝S7-5:

地域コホート研究からみたC型肝炎ウイルス持続感染者の自然史

演者 渡辺 久剛(山形大・消化器内科)
共同演者 齋藤 貴史(山形大・消化器内科), 河田 純男(兵庫県立西宮病院)
抄録 【目的】C型肝炎に関する多くの宿主側、ウイルス側因子の解明が進んでいるにもかかわらず、HCV持続感染後の自然史については明らかでない点も多い。HCV感染者の多くは無症状で経過するため、その自然史の理解には長期的な地域コホート研究の果たす役割が大きいと思われる。教室では過去20年にわたり、C型肝炎高浸淫地域の7,925名を対象にコホート追跡してきた。今回はこれまでの研究から明らかとなったウイルス自然治癒および肝発癌を中心に、HCV持続感染者の自然史の一端を報告する。【方法】HCV抗体陽性1,078名(13%)につき、自記式質問票による感染要因調査、血液生化学検査、エコーを用いた肝がん検診のほか、同意を得られた方のIL28B近傍SNPを測定した。最終的にHBs抗原陽性例やIFN治療例、30歳未満および80歳以上の対象を除いた913名について自然治癒関連因子を検討し、HCV抗体陽性全例の肝発癌調査をもとに発癌関連因子も解析した。【結果】経過中HCV自然治癒に至った例は66/526例(12.5%)であった。年齢(≦65)、肝機能正常例、肝炎歴なし、エコー上慢性肝炎所見なし、HCV抗体低力価、IL28B SNPメジャーホモが関連因子であった。ハザード解析ではIL28B遺伝子多型が最も有意な自然治癒因子であった(HR 10.83、p < 0.01)。一方、全例調査の結果78名の肝発癌が確認された。Kaplan-Meier法では男性、ALT値≧31、genotype 1b、BMI≧23の場合に有意に肝発癌率が高かった。発癌例78例と非発癌例827例を比較すると、肝機能異常例、HCV RNA持続陽性例、エコーで慢性肝疾患所見を有する例に多く肝発癌が見られたほか、IL28B SNPの頻度に差を認めた。【結論】20年にわたる我々のコホート研究からは、HCV感染の疫学のほか、キャリアにおける自然史に関する知見が集積され、日本におけるHCV感染の病態解明に少なからず寄与してきたと考える。今後はこれらの成果をいかに治療介入に結び付けていくかが課題であり、地域におけるHCVキャリアの病診連携を一層推し進める診療体制の構築が望まれる。
索引用語 地域コホート研究, C型肝炎自然史