セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胃・十二指腸(基礎)

タイトル 消P-307:

CXCR4胃癌癌性腹膜炎発症機序の分子生物学的解明ならびに新規標的治療法の開発

演者 安本 和生(金沢大附属病院・がん高度先進治療センター)
共同演者 山田 忠明(金沢大附属病院・がん高度先進治療センター), 川島 篤弘(国立金沢医療センター・臨床検査科), 矢野 聖二(金沢大附属病院・がん高度先進治療センター)
抄録 【目的】胃癌の予後を最も左右する癌性腹膜炎の成因は不明であり今なお効果的な治療法がない。本病態形成に本質的に関わる因子の同定と新規標的治療法の開発は急務である。【方法と結果】我々は、臨床検体や基礎的な検討の両面から新たな分子を模索し転移の臓器選択性という見地からケモカインに着目した。結果、(1)ケモカインレセプターCXCR4を発現するヒト胃癌細胞のみが実験動物モデルにおいて癌性腹膜炎を発症する.(2)その唯一のリガンドであるCXCL12がヒト腹膜および癌性腹水中に多量に存在すること.(3)動物モデルでのCXCR4阻害剤による有意な抗腫瘍効果などCXCR4が本病態の発症進展に深く関与することを見出した(Cancer Res 2006).さらに、癌性腹水中の増殖因子に着目し、胃癌細胞上でのCXCR4発現の大幅な亢進と同時に強力な増殖作用を有するEGFRリガンドであるAmphiregulin(AP)とHB-EGFの存在を初めて明らかにした.EGFRは進行胃癌の8割に発現が確認された.腹水中のAPならびにHB-EGFは、癌細胞膜上でsheddingされることで腹水中に遊離し活性化するが、癌性腹水中にはCXCL12のみならず活性化したAP、HB-EGFが多量に存在することも判明した。興味深いことに、本APの腹水中への産生亢進には、sheddingに関わる細胞膜上のADAM17(TACE)をHB-EGFならびにCXCL12が相乗的に促進活性化することも明らかとなった.また、がん微小環境を形成する線維芽細胞からもAPは恒常的に産生誘導されパラクリン的活性化をもたらす.臨床応用を踏まえ、動物モデルにおけるEGFR阻害の抗腫瘍効果についてEGFRモノクローナル抗体cetuximabを用いて検討した結果、癌性腹膜炎発症を有意に抑制し予後を大幅に改善した.【結論】胃癌細胞上のCXCR4発現ならびに癌性腹水中のAmphiregulinの存在は、癌性腹膜炎発症の重要なバイオマーカーであり、EGFRは効果的な治療標的となり得ると考えられる.
索引用語 腹膜播種, 分子標的治療