セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胃・十二指腸(基礎)

タイトル 消P-308:

胃潰瘍治癒過程におけるCytoglobinの発現解析

演者 田中 史生(大阪市立大・消化器内科)
共同演者 富永 和作(大阪市立大・消化器内科), 佐々木 英二(大阪市立総合医療センター・消化器内科), 谷川 徹也(大阪市立大・消化器内科), 渡辺 俊雄(大阪市立大・消化器内科), 藤原 靖弘(大阪市立大・消化器内科), 河田 則文(大阪市立大大学院・肝胆膵病態内科学), 吉里 勝利((株)フェニックスバイオ), 荒川 哲男(大阪市立大・消化器内科)
抄録 [目的] Cytoglobin (Cygb)は新たなグロビンファミリーであり、各臓器で広範に発現する。Cygbは低酸素環境において細胞内での酸化的代謝を維持する為に発現が亢進するが、胃潰瘍組織での発現について詳細は不明である。ラット胃潰瘍におけるCygbの発現と生理的役割について検討した。[方法] 8週令Wistar系雄性ラットを用い酢酸潰瘍を作成し 3, 11, 18, 25日目に屠殺、Cygb蛋白発現量をWestern blotting法にて検討した。また11, 18日目におけるHIF-1α, VEGF mRNA発現量をRT-PCR法にて解析した。胃潰瘍治癒期におけるCygb蛋白の局在について、vimentin, α-SMA, cytokeratin, HIF-1α, von Willebrand factorとの蛍光二重染色で検討した。[成績] Cygb蛋白は胃潰瘍治癒早期である潰瘍作成後11日目において最も発現量が高く、非潰瘍組織の1.87倍と有意な発現亢進を認めた (p < 0.05)。HIF-1α mRNA発現量も同様の傾向であり、11日目で2.29倍と経時的発現量のピークを認めた。VEGF mRNAは18日目で1.45倍と最も発現量が高く、Cygbとは時相的な相違を認めた。Cygbは治癒早期の潰瘍底部および潰瘍辺縁部の再生組織に局在し、間葉系細胞での共発現を認めた。一方上皮細胞ではCygbの発現は認めなかった。Cygbはvimentin陽性紡錘形細胞、腺管近傍にあるα-SMA陽性線形細胞で共発現し、それぞれ繊維芽細胞、筋繊維芽細胞と考えられた。また潰瘍辺縁の血管新生が未熟な領域において、Cygb・HIF-1αを共発現する紡錘形細胞が豊富に認められた。しかし既に血管新生を認める領域では、Cygbの局在は疎であった。[結論] Cygbは比較的低酸素状態である胃潰瘍治癒早期で発現のピークを認め、胃潰瘍治癒過程における未熟再生組織での一過性の酸素供給体である可能性が示唆された。
索引用語 胃潰瘍, 治癒