セッション情報 シンポジウム7(肝臓学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)

Cohort研究からみたウイルス性肝炎の解明

タイトル 肝S7-6:

肝炎ウイルス持続感染者の病態推移に関する数理疫学的研究

演者 田中 純子(広島大大学院・疫学・疾病制御学)
共同演者 小山 富子(岩手県予防医学協会), 池田 健次(虎の門病院・肝臓センター)
抄録 【目的】肝炎ウイルスの持続感染による肝病態推移率を明らかにすることは、治療介入効果を推定する上でも重要である。抗ウイルス療法を行わない場合の肝病態間の年推移確率をもとにMarcov過程に基づいた累積肝発癌率等を明らかにする。【方法および対象】1)【献血を契機に見つかったHCVキャリアコホート(広島県)】1991-2009年に献血を契機に見いだされたHCVキャリア3377人のうち1097人(33%)が医療機関を受診した。観察期間が1年未満、初診時診断が急性肝炎、肝癌を除外し699人(7237unit年推移情報)のうち無治療例は511人(4172unit)であり解析対象とした。平均観察期間は7.9年(最長17.8年)。平均年齢46歳。初診時の臨床診断の内訳は男性(AC 34%、CH 65%、LC 1%)であった。2)【検診を契機に見つかったHCVキャリアコホート(岩手県)】1993-2009年に検査で見つかった2923人のうち1830人(63%)が医療機関を受診した。同様の除外基準を適用した990人(7516unit)のうち無治療例は924人(6443unit)を解析対象とした。平均観察期間は6.8年(最長37年)。平均年齢62歳。初診時の臨床診断の内訳は男性(AC:16%、CH:81%、LC4%)であった。3)【hospital based HBVキャリアコホート(東京)】1990-1999年に虎ノ門病院において長期経過観察中のHBVキャリア(HBs抗原陽性かつHCV抗体陰性)入院外来913人から、同様の除外基準を適用した749人(6376unit)のうち無治療724人(5632unit)を解析対象とした。平均観察期間8年(最長26年)、平均年齢38歳。初診時の臨床診断の内訳は男性(AC 9%、CH89%、LC 2%)であった。【成績】無治療AC40歳起点を起点とした30年累積肝癌率は、(献血)HCV:男性16.6%・女性9.0%、(検診)HCV:男性8.7%・女性7.5%等であった。【結論】抗ウイルス治療介入のない病態推移率は以前と比較するとやや低い傾向があった。女性と比べ男性は肝がん累積罹患率が高く、適切な時期の治療介入の必要性がある。
索引用語 HCV・HBVキャリア, 自然病態推移