セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胃・十二指腸(基礎)

タイトル 消P-311:

IRF1欠損はヘリコバクター関連胃発癌に促進的に関与する

演者 芝田 渉(横浜市立大・消化器内科)
共同演者 安崎 弘晃(横浜市立大・消化器内科), 前田 愼(横浜市立大・消化器内科)
抄録 IRF(インターフェロン調節因子)は、免疫機構のなかで特にウイルス感染による自然免疫において重要な役割を果たしている。IRFは抗ウイルス分子IFN(インターフェロン)の発現調節のみならず、細胞増殖やアポトーシスに関わる遺伝子の転写にも関与する。IRF1はユビキタスに発現し、IL-12やiNOSなどのいくつかのサイトカイン発現に関与するが、一方で、IRF1の点突然変異が胃癌臨床検体において報告されていることから、IRF1の欠損は胃発癌に促進的に働くことが示唆されている。胃発癌におけるIRF1の役割については、矛盾点も多いことから、今回我々はIRF1ノックアウトマウスを用いて、ヘリコバクター関連胃発癌におけるIRF1の役割について検討した。IRF1ノックアウトマウスと野生型マウスにヘリコバクターフェリスを経口感染させ、感染後3から6か月における胃炎および腸上皮化生性変化について、病理学的検討を行った。細胞増殖やアポトーシスについては、免疫組織学的検査やELISAを用いて検討した。胃内におけるサイトカイン発現については、qRT-PCR法を用いて検討した。結果;観察期間中、マウスの成長発育に異常は認めなかった。感染3か月後に、IRF1ノックアウトマウスは強い胃炎と、腸上皮化生変化を認めた。胃のCaspase-3活性は、野生型マウスに比べてIRF1ノックアウトマウスにおいて高かった。Ki67免疫染色法で細胞増殖を検討した結果、野生型マウスに比べてIRF1ノックアウトマウスにおいて高い細胞増殖能を認めた。胃内のmRNA発現を検討した結果、炎症性サイトカインIL-6, TNF-alphaはともに野生型マウスに比べてIRF1ノックアウトマウスにおいて高く発現していた。現在、長期感染モデルを観察中である。結語;IRFシグナルの欠損は、胃上皮のアポトーシスや細胞増殖性変化の促進を介して胃粘膜の萎縮および腸上皮化生性変化を惹起していた。IRFシグナルが、胃上皮の分化や増殖に関与し、ひいては胃発癌に関与していることが示唆された。
索引用語 IRF1, Helicobacter