セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胃・十二指腸(機能性疾患)

タイトル 消P-316:

オレキシンと消化管運動

演者 野津 司(旭川医大・地域医療教育学)
共同演者 奥村 利勝(旭川医大病院・総合診療部)
抄録 【目的】脳相刺激(嗅覚,味覚,視覚等)は,胃酸,膵外分泌促進,胃,大腸運動促進など,食物の消化に適した消化管反応を引き起こす.これまで我々は,摂食関連神経ペプチドのオレキシンが,摂食を刺激するとともに胃酸分泌刺激作用を持つことを明らかにし,脳相刺激反応の脳内トリガー分子である可能性を指摘してきた.今回はオレキシンの消化管運動に対する作用について明らかにする.【方法】消化管運動は,ラットで胃前庭部あるいは近位大腸に3Frのカテーテルを挿入,持続的に蒸留水を灌流し,消化管内圧を圧トランスデューサーで測定した.また大腸運動の評価に関しては,薬剤投与後1時間の便排出数の測定も併せて行った.測定は薬剤の投与時以外は,無麻酔,無拘束で行った.【成績】食後期のラットにオレキシン-A(40μg/kg)を大槽内に投与すると,胃収縮は亢進した.この反応はアトロピン(1mg/kg)の腹腔内投与で阻止された.迷走神経活動を刺激する2-deoxy-D-glucose(200mg/kg)の静脈内投与は,胃収縮を促進させたが,オレキシン-Aの拮抗薬であるSB334687(160μg/kg)を大槽内投与しておくと,この反応は抑制された.空腹期のラットでは,周期的に強収縮を認める特徴的な運動パターンを認めたが,オレキシン-Aを投与すると,不規則な収縮が持続する食後期の胃運動パターンを呈した.オレキシン-A(4-40μg/kg)の大槽内投与は,用量依存性に便排出を促進した.これに対して腹腔内投与では,効果を示さなかった.また,大腸収縮も有意に促進した.【結論】中枢のオレキシンは,胃運動パターンを空腹期から食後期へ変化させ,迷走神経を介して胃運動を促進させた.また大腸運動も促進させた.以上の結果はオレキシンが脳相刺激反応の脳内トリガー分子である可能性を強く示唆する.オレキシンシグナルの低下は機能性胃腸症で認められる食欲不振,睡眠障害,抑うつ気分を起こすことから,今回の結果と併せて,オレキシンがこの疾患の病態に関与する可能性が考えられる.
索引用語 胃運動, 大腸運動