セッション情報 シンポジウム7(肝臓学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)

Cohort研究からみたウイルス性肝炎の解明

タイトル 肝S7-7:

県下肝炎ウイルス検診陽性者の検診後病態進展度

演者 酒井 明人(金沢大・消化器内科)
共同演者 金子 周一(金沢大・消化器内科)
抄録 【目的】Cohortとしての肝炎ウイルス検診陽性者の経過は十分に把握されていない。当県では検診当初より行政が継続フォローアップし、さらに平成22年度より「肝炎診療連携」事業により検診陽性者に年1回専門医受診勧奨を行い、専門医による診断が行われている。今回当県肝炎ウイルス検診陽性者をCohortとしたウイルス性肝炎の経過、治療状況を検討した。【方法】平成14年から18年の間の肝炎ウイルス検診陽性2750例に専門医療機関受診勧奨を行った。調査票が回収された606例の現在の病態、及び検診年度診断が明らかな294名で検診から4~8年での進展度、治療状況を解析した。【結果】平成22年度診断名はB型肝炎277例で無症候性キャリア(ASC)189名(68.2%)、慢性肝炎(CH)77例(27.8%)、肝硬変(LC)6例(2.2%)、肝癌(HCC)5例(1.8%)、C型肝炎329例でCH281例(85.4%)、LC35例(10.6%)、HCC13例(4.0%)。B型肝炎では検診時ASC96例→ASC77例(80.2%)、CH19例(19.8%)、検診時CH30例→ASC15例(50%)、CH14例(46.7%)、HCC1例(3.3%)、検診時LC2例→CH1例、LC1例で明らかな病態進展はHCC発症の1例(0.8%)。一方C型肝炎では検診時CH151例→CH130例(86.1%)、LC14例(9.3%)、HCC7例(4.6%)、検診時LC14例→CH5例(35.7%)、LC6例(42.9%)、HCC3例(21.4%)であり進展例はCH→LC、HCCの21例、LC→HCC3例の計24例(14.5%)。C型へのIFN療法は79例(47.6%)で行われ、著効29例(36.7%)。検診時CHでIFN著効症例では病態進展例はおらず、一方IFN未投与78例中9例(11.5%)、IFN非著効37例中9例(24.3%)で病態が進展していた。LCではIFN未投与8例中3例(37.5%)でHCCを発症したが投与例では現在HCC発症は0例であった。【考察】検診から4~8年の経過で肝炎ウイルス検診陽性者のうち、B型肝炎は比較的予後良好であった。C型肝炎ではIFN未投与、非著効例で病態が進展していた。今回のCohortは検診陽性者のうち専門医受診者が対象であり、「肝炎診療連携」で把握されない症例の状況確認が急務である。
索引用語 肝炎ウイルス検診, 病態進展度