セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胃・十二指腸(内視鏡診断、NSAIDs)

タイトル 消P-324:

バイアスピリンによる胃酸分泌、胃粘液分泌に及ぼす影響と胃粘膜障害-健常ボランティアにおける服薬前後の変化-

演者 岩渕 利光(東北大大学院・消化器病態学)
共同演者 飯島 克則(東北大大学院・消化器病態学), 荒 誠之(東北大大学院・消化器病態学), 宇野 要(東北大大学院・消化器病態学), 浅野 直喜(東北大大学院・消化器病態学), 阿部 靖彦(東北大大学院・消化器病態学), 小池 智幸(東北大大学院・消化器病態学), 今谷 晃(東北大大学院・消化器病態学), 下瀬川 徹(東北大大学院・消化器病態学)
抄録 【背景】アスピリンは、循環器領域・脳神経領域を中心に幅広く使用されているが、低用量であっても長期服用にて消化性潰瘍などの胃腸障害を引き起こすことが知られている。アスピリンによる胃粘膜障害の機序として、胃粘膜中のプロスタグランジン(以下PG)の低下が胃の防御機能を破綻させることが想定されており、また胃酸分泌と胃粘液分泌のバランスによって胃粘膜障害が規定される可能性がある。我々は独自に考案したEndoscopic gastrin test(EGT)を用い、アスピリン服用の胃酸分泌、胃粘液分泌の変化を評価し、胃粘膜障害との関連について検討した。【方法】対象はH. pylori陰性の男性健常成人ボランティア30名。平均年齢は24.9±17歳。バイアスピリン100m1日1回を10日間服用した。服用前,3日,10日後に内視鏡検査を行い、EGTを用いて胃液を採取、胃粘膜障害の程度をLANZAscoreを用いて判定した。【結果】自覚症状および胃酸分泌能は服薬前後で有意差を認めなかった。LANZAscoreは服用前と比較し、服用3日後と同10日後でそれぞれ有意に高値であった。胃粘液量は、服薬前に比べ服薬10日目で有意に増加した(1.4±1.0:1.7±1.0,p<0.05)。酸/粘液比は逆に低下した(5.4±3.9:3.8±2.7,p<0.05)。胃粘膜障害の有無で2群に分けると、障害有群(LANZA≧3)では、胃粘液量および酸/粘液比は服薬前後で有意差は無く、障害無群(LANZA≦2)では、胃粘液量は服用前と比べ服薬10日後で有意に高値であり、酸/粘液比は逆に有意に減少した。【まとめ】アスピリンは、服用後短期間より胃粘膜障害を引き起こす可能性があり、その有無は胃粘液量と関連する事が示唆された。これまでアスピリンはPGを減少させ、その結果、胃粘液産生が減少するものと考えられてきたが、この研究ではアスピリン服用後の胃粘液量は逆に増加しており、胃粘液産生にはPGを介さない何らかの経路がある事が示唆された。
索引用語 NSAIDs, アスピリン