共同演者 |
大原 秀一(東北労災病院・胃腸科), 高橋 麗子(東北労災病院・胃腸科), 楠瀬 寛顕(東北労災病院・胃腸科), 玉渕 泰史(東北労災病院・胃腸科), 半田 朋子(東北労災病院・胃腸科), 齋藤 晃弘(東北労災病院・胃腸科), 北川 靖(東北労災病院・胃腸科), 小島 康弘(東北労災病院・胃腸科), 前川 浩樹(東北労災病院・胃腸科), 浜田 史朗(東北労災病院・胃腸科) |
抄録 |
【目的】高齢化社会をむかえて消炎鎮痛剤としてのNSAIDsに加え、脳血管障害、虚血性心疾患の二次予防としての低用量アスピリンの処方が増加し、現在では一次予防も含めて多くの患者が内服している。それにともないNSAIDs起因性消化管病変も多く指摘されている。当院における上部消化管出血性潰瘍の服用群と非服用群の臨床的な違いについて検討を行った。【方法】2004~2010年の7年間に当院で入院加療を行った上部消化管出血197例(出血性胃潰瘍152例,出血性十二指腸潰瘍性病変42例,併存3例,男:女=133:64,平均年齢66.5歳)を対象として後ろ向きに検討を行った。【結果】アスピリン内服を含めたNSAIDs内服例は83例(42.1%)であった。確認できたHelicobacter pylori(HP)感染率は83.5%の137例(137/164)で陽性あった。HP感染、内服歴が確認できた123例をN群(HP陰性のNSAIDs投与)14例, N+HP群(NSAIDs投与+HP陽性)40例,C群(NSAIDs非投与)69例の3群に分類して臨床的に比較した。C群のHP感染率は88.4%であった。平均入院日数はN群11.0日,N+HP群13.1日,C群12.6日であった。N群とN+HP群は腹痛などの腹部症状に乏しく(腹痛なし:N群71.4%,N+HP群66.6%,C群46.2%)、出血症状(吐血、下血など)はN群100%,N+HP群79.6%,C群91.3%で認めた。またN+HP群は他群と比較して多発潰瘍率が高かった(N群21.4%,N+HP群46.1%,C群30.4%)。潰瘍部位はC群、N+HP群ではM領域に多かったが、N群では十二指腸潰瘍の割合が最も多かった(50.0%)。【結論】NSAIDs起因性の出血性潰瘍はHP感染者で多発潰瘍傾向を示し、HP非感染者のNSAIDs内服群では十二指腸潰瘍の割合が多い傾向を認めた。非内服群と比較し腹部症状に乏しい傾向が認められたがNSAIDsの抗炎症作用による影響も一因として推測された。 |