セッション情報 消化器病学会特別企画1(消化器病学会)

日本消化器病学会ガイドライン(大腸ポリープ、機能性消化管障害、NAFLD/NASH)中間報告

タイトル 消特企1-3指:

機能性消化管障害2 (IBS)ガイドライン作成の現状と問題点

演者 金子 宏(星ヶ丘マタニティ病院)
共同演者 福土 審(東北大大学院・行動医学)
抄録 【目的】過敏性症候群(IBS)の日本人有病率は10~15%とされ、慢性の腹痛で受診する場合、最も頻度の高い疾患である。生命予後が良好である、あるいは保険制度の問題もあり、腹痛や便通異常があってもIBSと適切に診断をつけ、エビデンスに基づいた治療を実践している臨床医は必ずしも多くはないと推定される。IBSの生活の質への影響のみならず、欠勤、作業能率の低下による社会生産性の低下、医療費への影響を考えた場合、臨床医に役立つガイドラインの作成が不可欠な機能性消化管障害の代表的疾患である。ガイドラインでの臨床的疑問(clinical question: CQ)を選定し、それに対する推奨度、エビデンスレベルを提示することを目的とした。【方法】福土委員長、金子副委員長を含めた12名の作成委員と2名の評価委員によりガイドラインのあり方を検討し、CQとそれに対するキーワードを分担作成し、外部専門機関に検索依頼を行い、絞り込みの作業を行う。【成績】機能性消化管障害1 (FD)ガイドラインと整合性を持たせることにも注意を払い、以下の分野についてCQを設定した。但し、治療および診断に一部については、従来のMindsの分類ではなくGRADEシステムでのレベル設定をする方針に基づき、CQの見直しなどの作業を行うことが必要となり、さらに設定までに時間を要した。抄録作成時点でのCQは、定義1、疫学6、病態6、診断10、治療30、予後3、合併症6、計62個が候補とされている。【結論】機能性消化管障害の診断基準は様々あり、プラセボ効果が高いことが知られている。臨床で役にたつガイドライン作成となると本邦の医療事情にあった推奨度を示すためには、ローマ基準に必ずしも縛られることなく実臨床にあったエビデンスを加味することが可能なGRADEシステムによる治療のCQへの提言は、IBSの診療ガイドラインのみならず既報あるいは境界領域の疾患へのそれの見直し・制作に様々な示唆を与えうる潜在的可能性があると思われる。
索引用語 過敏性腸症候群, ガイドライン