セッション情報 |
シンポジウム7(肝臓学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)
Cohort研究からみたウイルス性肝炎の解明
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タイトル |
肝S7-8:原爆被爆者の長期追跡コホートにおけるウイルス性肝炎研究
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演者 |
大石 和佳(放射線影響研究所・臨床研究部) |
共同演者 |
藤原 佐枝子(放射線影響研究所・臨床研究部), 茶山 一彰(広島大大学院・分子病態制御内科学) |
抄録 |
【目的】我々は、1958年より約2万人の原爆被爆者コホートの健診調査を行い、肝炎スクリーニングを繰り返し実施してきた。被曝線量はHBVキャリアの増加に関連することが明らかになったが、HCV抗体陽性者の増加に関連するという知見は現在のところ得られていない。また近年、NKG2D(NK細胞活性レセプターの1つ)のリガンドであるMICA遺伝子のSNPが肝細胞癌(肝癌)リスクと関連することが報告された。目的は、原爆被爆者の長期追跡コホートにおいて、肝癌発症に関連するリスク因子を遺伝素因も含め明らかにすることである。【方法】1993-95年の肝炎スクリーニング(HBVとHCV)を受けた成人健康調査対象者6,121人について、肝癌発生の追跡調査を行った。輸血歴、飲酒歴、喫煙歴、BMIなどの情報は、1993-95年の質問票と健診データから取得した。6,121人の中で、2000-02年の免疫調査に参加したHCV抗体陽性例(HCVRNAが陽性160人、陰性106人)について、HCV持続感染とNKG2D遺伝子多型との関連を解析した。【成績】1) 肝炎ウイルス、性、年齢を調整した解析では、HCV抗体陽性、HBs抗原陽性、男性に対する肝癌の相対リスク[95%信頼区間(CI)]は、それぞれ20.2 (11.7-35.1)、5.4 (1.9-15.1)、2.5(1.5-4.3)であった。ベースラインにおける飲酒と肝癌リスクについては、有意な関連は見られなかった。2) 性、年齢、喫煙歴、飲酒歴、輸血歴、被曝線量を調整した解析では、HCV持続感染はNKG2Dのハプロタイプ(LNK1/LNK1 or LNK1/HNK1 vs. HNK1/HNK1)と有意に関連し、オッズ比(95%CI)は3.19 (1.22-8.35)であった。【結語】HBVおよびHCV感染、男性が肝癌発症のリスク因子であった。飲酒がリスク因子でなかった理由として、断酒した人のHCV抗体陽性率がその他の人に比べ有意に高かったことが考えられる。また、HCV感染後の感染持続とNKG2Dの遺伝子多型が関連することが示唆された。さらに追跡期間を延ばして、各種リスク因子と肝発癌の関連について解析を進めている。 |
索引用語 |
肝細胞癌, 肝炎ウイルス |