セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胃・十二指腸(H.pylori)2

タイトル 消P-339:

胃洗浄液を材料としたH.pylori菌の感染診断およびクラリスロマイシン耐性に関する検討

演者 馬場 哲(川崎市立多摩病院・消化器・肝臓内科)
共同演者 大石 嘉恭(聖マリアンナ医大・消化器・肝臓内科), 渡邊 嘉行(聖マリアンナ医大・消化器・肝臓内科), 平石 哲也(聖マリアンナ医大・消化器・肝臓内科), 鈴木 通博(川崎市立多摩病院・消化器・肝臓内科), 伊東 文生(聖マリアンナ医大・消化器・肝臓内科)
抄録 目的:近年CAM耐性株の増加によりH.pylori菌除菌率の低下が示唆されている。この耐性株は23SrRNAに単一塩基対変異(SNPs)を持つことが報告されている。今回、胃洗浄液からDNAを抽出しPCR分析とpyrosequencing分析を併用して、H.pylori菌のureA遺伝子、cagA遺伝子、23SrRNA中のSNPsを解析し、除菌治療の効果が予測可能であるかを検討した。方法:対象は97例で、胃粘膜と胃洗浄液を採取した。H.pylori感染診断は迅速ウレアーゼ試験(RUT)を行い、胃洗浄液の結果と異なる症例には血清H.pylori IgG抗体の測定を追加した。胃洗浄液より抽出したDNAよりureA遺伝子とcagA遺伝子に対するPCR分析を行った。23SrRNA中のSNPsの解析ではA2143G、A2143C、A2144Gをシークエンスターゲットとした。RUTとureA遺伝子が共に陽性であった15例に対して除菌治療を施行した。成績:RUTは41例が陽性であった。ureA遺伝子の発現は35例で、ureA遺伝子発現の感度は85.4%、特異度は83.9% であった。RUTとureA遺伝子の不一致を15例で認め、血清H.pylori IgG抗体を測定した。4例が偽陽性、3例が偽陰性と推定された。RUT陽性かつureA遺伝子陽性例35例全例でcagA遺伝子の発現を認めた。23SrRNAの遺伝子変異は35例中12例に認め、全てがA2144G領域に存在していた。15例で除菌治療が施行されたが、除菌率は変異株感染例で40%(2/5例),野生株感染例で90%(9/10例)であった。結論:H.pylori菌に対する感染診断だけではなく、除菌治療の効果を推測したり感染株を分析することにおいてはPCR法の臨床応用が有用であると考えられる。胃洗浄液より抽出されたDNA量はureA遺伝子、cagA遺伝子、23SrRNAを解析するために十分な量であった。12例(12/35例 34.3%)で23SrRNAに遺伝子変化を示し、この結果は既に報告されている変異率と同等であった。CAMを用いた一時除菌治療において変異株例の除菌率が低いことより、薬剤感受性との相関関係が示唆された。
索引用語 ヘリコバクターピロリ菌, 胃洗浄液