セッション情報 シンポジウム7(肝臓学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)

Cohort研究からみたウイルス性肝炎の解明

タイトル 肝S7-9:

C型肝炎の自然史は如何に変化したか、慢性肝炎・肝硬変の病理組織からの検討

演者 楡井 和重(日本大・消化器肝臓内科)
共同演者 松村 寛(日本大・消化器肝臓内科), 森山 光彦(日本大・消化器肝臓内科)
抄録 【目的】昨今日本の臨床の場においては、その複雑な手技や危険性の回避などより、肝疾患おける針肝生検が敬遠される傾向にある。我々は今まで、慢性C型肝炎・肝硬変の病理組織所見について種々の検討を加えてきた。1990年から2000年までの間に、本邦の慢性C型肝炎・肝硬変について、1)F3,F4 stageからの発癌が年率7%程度とF2未満に比較して極めて高率となり高癌化状態にあること。2)このF stageは、年率0.13 stage/year前後にて進展すること。3)逆にIFN治療にてHCVを駆除すれば、このF stage 年率が-0.2stage/year前後にて減少すること。4)HCC発生までの期間は、感染より約25年であること。5)高齢にてHCVに感染した場合は、非高齢者での感染に比較してF stageの進展が早くHCC発生までの期間も短いこと、などが報告され、現在ほぼコンセンサスとなっている。しかしながら、これらの結果はあくまでも2001年までの成績より出された結果であり、リバビリンの併用が始まり、ウイルス性肝疾患治療に劇的な進歩を遂げた2002年以降にも当てはまるかどうかの確証はない。そこで我々は、この2002年からの10年間においても、上記の項目が現在でも同様の数字となっているのか変化しているのかについて検証を試みた。【対象と方法】2002年1月から当施設にて針肝生検を施行されたC型慢性肝炎・肝硬変305例と、1992年より2001年12月までの430例である。【結果】平均年齢は、(47±12歳: 54±12歳)であり、最近の10年は、以前と比べ有意に高齢化が示唆された。 F stage進展年率(0.082stage/y : 0.118stage/y)ないしHCC発生年率(全例0.39%/1.06%, F4のみ4.47%/5.22%)、HCC発生までの期間(35.4y/36.7y)は、両群間にいずれも有意差は見られないが、近年の方がより改善されていた。またsteatosisの頻度とその程度は近年の方が強かった。【まとめ】リバビリン投与や治療介入などにより、C型肝炎の自然史には相違が生じていることが示唆された。
索引用語 ウイルス性肝炎, 自然史