セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胃・十二指腸(良性疾患)

タイトル 消P-345:

東日本大震災後の出血性潰瘍のリスクについての検討

演者 菅野 武(東北大大学院・消化器病態学)
共同演者 阿部 靖彦(東北大大学院・消化器病態学), 飯島 克則(東北大大学院・消化器病態学), 小池 智幸(東北大大学院・消化器病態学), 島田 憲宏(石巻赤十字病院・消化器内科), 星 達也(気仙沼市立病院・消化器科・内科), 佐野 望(塩竈市立病院・内科), 大矢内 幹(大崎市民病院・消化器科), 熱海 智章(市立栗原中央病院・内科), 阿曽沼 祥(みやぎ県南中核病院・消化器科), 下瀬川 徹(東北大大学院・消化器病態学)
抄録 【背景・目的】我々はこれまでの報告で、東日本大震災後の被災地において消化性潰瘍の発生は1.5倍以上に増加することを明らかにした。災害時医療において、潰瘍症の中でも出血性潰瘍は、致死的となり得るもので、その背景を探ることは臨床的に重要である。今回、被災地域である宮城県において、震災後の出血性潰瘍(胃および十二指腸潰瘍)のリスクファクターを明らかにすることを目的とした。【対象】宮城県内基幹7病院において、震災発生(2011年3月11日)から3か月間、新たに内視鏡的に診断された胃十二指腸潰瘍症例を対象とした。潰瘍症例を出血性潰瘍群と非出血性潰瘍群の2群に分け、非出血性潰瘍群をコントロールとして出血性潰瘍のリスクファクターを検討した。性別、年齢、避難所とそれ以外、H.pylori感染、NSAIDs/抗血小板薬/ワーファリンの内服の有無を独立変数とし、出血性潰瘍に及ぼす影響をロジスティック回帰分析を用い評価し、オッズ比(95%信頼区間)を算出した。【結果】震災発生から3か月間で383症例が内視鏡的に潰瘍と診断された。うち出血性潰瘍が257例、非出血性潰瘍が126例であった。多変量解析で年齢(70歳以上): 2.4 (1.2-5.0)、H. pylori感染: 2.6 (1.2-5.3)、避難所: 4.0 (1.6-10.1)が有意な出血のリスク因子であった。また、性別、NSAIDs等内服の有無は有意な因子とはならなかった。【結語】東日本大震災後の出血性潰瘍のリスクとして、高齢者、避難所環境が挙げられ、高齢者において避難所生活による心因的ストレスが出血性潰瘍の発症に関連していると考えられた。H.pylori感染に関しては欠測値が多く、追加の検討を行い報告する。
索引用語 出血性潰瘍, 東日本大震災