抄録 |
【目的】高齢者における出血性胃十二指腸潰瘍に対するソフト凝固を用いた内視鏡的止血術の有用性について若年者と比較検討し報告する.【対象,方法】2003年10月から2012年2月までに緊急内視鏡検査を施行した出血性胃十二指腸潰瘍例のうちソフト凝固にて止血術(エタノール,HSE,クリップ併用も含む)を必要とした94例(平均年齢70.8±11.2歳 男性67例・女性27例)において高齢者群(71歳以上 以下A群)と若年者群(70歳以下 以下B群)に分けて初回永久止血率,背景因子,止血困難例の特徴についても検討した. 止血困難例の定義は一度内視鏡的止血を試みるも再出血を来たし吐下血例又はHbが2g/dl以上低下した例および内視鏡治療適応外と判断した例としretrospectiveに検討した. 【結果】初回永久止血率はA群89.6%(43/48), B群95.7%(44/46)と有意差を認めなかったがA群で低い傾向であった. 群間比較ではA群で女性が多く,抗血小板薬(ACP)服用有無, NSAIDs服用有無,ショックの有無,Forrest分類,露出血管径では差は認めなかったが, A群において輸血率 が有意に高く初診時Hbが有意に低い傾向であった.(P<0.01) 【結論】ソフト凝固による止血術は高齢者において初回止血成功率が劣る傾向ではあったものの有意差はなく若年群と同等の止血効果が得られ有効な治療と考えられた.特にACP服用例における止血術において,クリップ単独ではクリップ施行部辺縁からの出血が持続する例もあり止血に難渋する症例も認められるためソフト凝固による止血術を第一選択としている.しかしながら高齢者群では初診時Hbが有意に低下している傾向にあり輸血の必要とする症例が多く,全身状態を十分考慮する必要がある. |