セッション情報 シンポジウム7(肝臓学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)

Cohort研究からみたウイルス性肝炎の解明

タイトル 肝S7-10:

C型肝炎IFN治療後の発癌ポテンシャル評価 ~大規模コホート研究~

演者 安井 豊(武蔵野赤十字病院・消化器科)
共同演者 朝比奈 靖浩(武蔵野赤十字病院・消化器科), 泉 並木(武蔵野赤十字病院・消化器科)
抄録 【目的】C型肝炎インターフェロン(IFN)治療は多数例に施行され、長期経過観察症例も増えた。今回発癌寄与リスクにつきIFN治療前肝生検施行例を対象に大規模コホート研究を実施した。また、非癌部organic anion transporter (OAT) 2発現が肝癌切除後の再発マーカーとして有用との報告(工藤ら肝臓学会総会2011)に基づき、OAT2の発癌マーカーとしての有用性を検討した。
【方法】1992年より肝生検後IFN治療を行った2166例(平均 55歳、男性/女性 1080/1086、平均観察期間 7.5年)のコホートを対象とし、持続的に発癌スクリーニング行い発癌寄与因子を解析した。5年未満発癌を早期発癌群、5年以上経過後発癌を後期発癌群とし、両群を比較した。発癌群で背景肝のOAT2染色が得られた32例について、発癌までの期間と染色結果を検討した。
【成績】累積発癌率は5年5%、10年11%であり、発癌に寄与する独立因子として年齢(リスク比=2.2/10歳毎)、性別(男性=1.7)、治療後AFP値(1.8/10ng/ml毎)、F因子(F3,4=2.5)、肝脂肪化(10%以上=2.8)、コレステロール値(0.2/100mg/dl毎)、血糖値(1.7/100mg/dl毎)が有意であった。早期発癌群と比し、後期発癌群は肝生検時の年齢が有意に高く(p=0.0007)、その他の発癌寄与因子は有意差を認めなかった。5年以上観察しえた非SVR症例に限った検討で後期発癌に寄与する独立因子は、年齢(2.5/10歳毎)、治療後AFP値(1.3/10ng/ml毎)、脂肪化(脂肪化10%以上=2.7)、F因子(F3,4=5.0)が有意であった。
発癌群32例をOAT2染色の低下群、非低下群に層別化すると、低下群で有意に発癌までの期間が短い傾向にあった(p=0.1)。低下群は非低下群と比し有意に早期発癌が多かった(63% vs 37%, p=0.04)。
【結論】高齢者、IFN治療後AFP高値例、高度線維化例、脂肪化例では治療後5年以上経過後も発癌のリスクがあり経過観察が重要である。再発マーカーとして考えられているOAT2染色は発癌マーカーとしても有用であり、トランスポーター機能に着目した免疫染色による肝発癌ポテンシャル予測の将来性が期待される。
索引用語 C型肝炎, 肝発癌