セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胃・十二指腸(癌)4

タイトル 消P-377:

癌性心膜炎を合併した若年性胃癌に対してDocetaxel/Cisplatin/S-1(DCS)療法が奏効した1例

演者 小林 克誠(筑波大附属病院・消化器内科)
共同演者 森脇 俊和(筑波大附属病院・消化器内科), 寺崎 正彦(筑波大附属病院・消化器内科), 小林 真理子(筑波大附属病院・消化器内科), 綿引 隆久(筑波大附属病院・消化器内科), 越智 大介(筑波大附属病院・消化器内科), 松本 梨絵(筑波大附属病院・消化器内科), 遠藤 慎治(筑波大附属病院・消化器内科), 奈良坂 俊明(筑波大附属病院・消化器内科), 鈴木 英雄(筑波大附属病院・消化器内科), 溝上 裕士(筑波大附属病院・消化器内科), 兵頭 一之介(筑波大附属病院・消化器内科)
抄録 【はじめに】胃癌の癌性心膜炎合併例は極めて予後が悪く、全身状態不良のため積極的治療が不能なことも少なくない。DCS療法は本邦でのPhaseII試験で、高い奏効率と忍容性に優れていることが示唆されている。
【症例】症例は45歳男性。家族歴は父が胃癌(45歳で癌死)、叔母が胃癌(40歳で手術)。心タンポナーデによる呼吸状態の悪化あり、前医へ緊急入院。心嚢水は血性、細胞診でclassV(adenocarcinoma)であり、精査加療目的で当院へ転院となった。上部消化管内視鏡で胃体部中心にtype4を呈し、生検結果はadenocarcinoma (por1 = sig = tub2)で、進行胃癌、癌性心膜炎と診断した。心嚢ドレナージにて呼吸状態は安定し、DCS療法を開始した。心嚢ドレナージ抜去後も心嚢水は再貯留せず、1コース終了の時点で全身状態は改善し退院した。以降、外来で7コース(無増悪生存期間約5ヶ月)まで投与したところで癌性心膜炎が増悪し、現在methotrexate/5-FU療法に変更して治療中である。DCS療法中の主な有害事象はgrade 3の好中球減少と2~3日間続くgrade 2の倦怠感のみだった。
【考察】癌性心膜炎を合併した本症例は、DCS療法に期待される高い奏効率により確実な効果を得られた。DCS療法のPhaseII試験におけるgrade 3以上の有害事象は血液毒性が主で、非血液毒性はいずれも数%に留まる。本症例でもgrade 3の好中球減少以外に重篤な有害事象はなく、順調に外来治療を継続できた。加えて、本症例は遺伝性びまん性胃癌である可能性が高い。父方の二度近親者以内に3人の胃癌患者があり、いずれも50歳以下の発症だった。しかし、近親者の組織型が不明のため診断基準を満たすには至っていない。Cadeherin1(CDH1)遺伝子は、遺伝性びまん性胃癌との関連が知られる唯一の遺伝子であり、今後遺伝子カウンセリングを行うとともに、本人や子に対してCDH1遺伝子変異の検索を予定している。
索引用語 DCS療法, 癌性心膜炎