セッション情報 シンポジウム7(肝臓学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)

Cohort研究からみたウイルス性肝炎の解明

タイトル 肝S7-13:

HBs抗原消失及び発癌からみたB型肝炎の長期予後

演者 小林 万利子(虎の門病院・肝臓研究室)
共同演者 鈴木 文孝(虎の門病院・肝臓センター), 熊田 博光(虎の門病院・肝臓センター)
抄録 【目的】今回我々は、HBs抗原消失及び発癌からみたB型肝炎の長期予後について検討した。【対象・方法】対象は、経過観察15年以上の2112例の自然経過1130例と治療982例とした。内訳:男性1431例(68%)、年齢38(1-81)歳、CH 2031例(96%), HBV genotype A:B:C(4%, 13%, 81%)であった。方法は、初診時の年齢,性,家族歴,初診時診断,AST,ALT,PLT, FP,HBV DNA(リアルタイムPCR法),HBs抗原量(CLIA法),HBe抗原,HBV genotype,HBコア関連抗原量から解析した。統計は、Kaplan-Meier及びCox proportional hazard modelを用いた。【成績】1.両群(自然経過:治療)の背景で有意差が認められた因子は、年齢MED(39歳:36歳)・男性(62%:74%)・HBV genotype A:B:C (6%/20%/74%:3%/11%/85%)・e抗原陽性(24%:68%)・HBV DNA(4.7:8.0)Logcopies・HBs抗原(2240:5270)IU・HBコア関連抗原(3.6:>6.8)LogUで、自然経過は、高年齢で女性が多くgenotype A,Bが多くe抗原が低率でDNA量・s抗原量・コア関連抗原量が低値であった。2.両群のs抗原消失率は、無治療例:10年17%,20年28%,30年61%であった。一方、治療例は、抗ウイルス製剤最終投与開始時で打ち切り:10年21%,20年37%,30年44%であった。3.自然経過例からの肝癌発生率は、全体で10年7%,20年20%,30年38%であった。S抗原消失の有無別では、s抗原消失例は、10年8%,20年10%,30年25%であり、持続陽性例は、10年7%,20年21%,30年35%とs抗原消失例は、持続陽性例に比し有意に(P=0.046)低率であった。4.s抗原消失後の肝癌発生率は、自然経過は5年0.3%,10年以降0.6%であり、治療例は5年0.2%,10年以降0.7%であった。【結語】s抗原が消失すると肝発癌が低率になることから、B型慢性肝炎においてs抗原の消失を目指した治療を行うことが大切であると思われた。
索引用語 HBV, HBs抗原