セッション情報 |
シンポジウム8(消化器病学会・肝臓学会・消化器がん検診学会合同)
NASHからの発癌:基礎と臨床
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タイトル |
消S8-1:Palmitoleateは飽和脂肪酸によるJNKリン酸化と小胞体ストレスを抑制する
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演者 |
赤澤 祐子(長崎大病院・消化器内科) |
共同演者 |
中尾 一彦(長崎大病院・消化器内科), G. Gores(Division of Gastroenterology and Hepatology, Mayo Clinic) |
抄録 |
【目的】血清遊離脂肪酸濃度の上昇はNASHの病態に深く関与する。特に飽和脂肪酸による肝細胞の過剰なアポトーシスは肝繊維化を促進し、長期的には発癌のリスクと関連している可能性がある。我々はこれまでに飽和脂肪酸がJNKリン酸化と小胞体(ER)ストレスを惹起し liver cell injuryを誘導することを証明した。一方、不飽和脂肪酸palmitoleate (16:1, PO)は脂肪細胞から放出され、インスリン抵抗性や脂肪肝を改善する脂質ホルモンであることが報告された。しかしPOがヒト肝細胞に与える影響についてはほとんど研究されていない。我々は飽和脂肪酸palmitate(PA,16:0) による肝細胞JNK活性とERストレス誘導に対しPOがどのように作用するかを検討した。【対象と方法】PA (800uL)とPO(100-800uL)を用い、Huh-7細胞を刺激した。ER ストレスマーカーの検討は以下のように行われた。ERの形状は電子顕微鏡を用いて観察し、C/EBP homologous transcription factor (CHOP)、GADD34、GRP78をreal time PCRで検討した。XBP-1mRNAのsplicingをPCR後、制限酵素Pst-1にて切断し検討した。eIF2αとJNKのリン酸化はimmunoblotを用いて検討した。【結果】POはPAによるERの増大とGRP78のmRNA上昇は抑制しなかったが、下流にあるPAによるCHOP とGADD34 mRNAの発現を有意に抑制した。またPOはPAによるeIF2αのリン酸化、XBP-1のsplicing、JNKのリン酸化についても抑制した。さらにPOはPAによるアポトーシスを濃度依存性に抑制することをDAPI染色とCaspase 3/7 activity assayで確認した。一方でPOはTNF-related apoptosis-inducing ligand及びER stress inducerであるtapsigarginによる肝細胞アポトーシスは抑制しなかった。【結論】POは飽和脂肪酸によるERストレスとJNKのリン酸化を抑制する。体内のPO濃度上昇が飽和脂肪酸によるアポトーシスの抑制に利益をもたらす可能性がある。 |
索引用語 |
palmitoleate, 小胞体ストレス |