抄録 |
(目的) 胃癌におけるcT(術前の深達度診断)およびcN(CTによるリンパ節転移診断)に基づく術前のリンパ節転移診断の精度を明らかにすることを目的とした。(対象)2002年10月から2012年3月までに当科で経験した胃癌のべ3306例中残胃の癌を除き初発で前治療歴が無くD1以上の郭清を伴うR0/1切除が達成されリンパ節転移の病理学的検討が可能であった2581例を対象。今回の検討では,ESD施行症例で術前に病理学的深達度が判明している症例でも内視鏡時の深達度をcTとした。(結果)cT1a,cT1bの病理学的リンパ節転移率は8%(52/654),21%(158/738)で,cT1a/cN0,cT1b/cN0のリンパ節転移率は8%(50/636),19%(131/690)であった。全体のCTリンパ節転移診断の敏感度は50%(505/1029),特異度92%(1434/1552)であった。術前深達度別に検討すると,敏感度はcMでは4%(2/52),cSMで18%(27/158)であった。cT2/cN0,cT3,4/cN0のリンパ節転移率は44%(122/279),63%(221/353)で,またcT2,cT3/4のCT診断の敏感度は29%(50/172),70%(426/647)で早期癌より上昇したが,特異度は96%(15/163),64%(132/207)と低下した。cN(+)でcT1のpN2(旧規約)は21%(14/66)であった。2群リンパ節転移の診断の敏感度は27%(120/460),特異度96%(2055/2121)で,cT1a,cT1bにおける敏感度は6%(1//17),2%(1/48)と低かった。(結語)術前早期癌でかつcN0でも少なからずリンパ節転移が存在し,また極端に低い敏感度からCTの意義は他病変の検出という意味以外は薄いといえる。cN(+)の場合は術前早期癌と判断されても20%以上の2群リンパ節転移が存在し,D2郭清の対象と考える。進行癌ではcN0であっても半数以上のリンパ節転移例が存在し縮小手術の対象とはならない。ESD対象外の胃癌に対しては精緻なリンパ節郭清(D1+,D2もしくはOpen/Lapを問わず)が必要である。 |