セッション情報 シンポジウム8(消化器病学会・肝臓学会・消化器がん検診学会合同)

NASHからの発癌:基礎と臨床

タイトル 肝S8-2:

非アルコール性脂肪性肝疾患からの肝発癌における骨髄由来抑制細胞の役割

演者 阿部 雅則(愛媛大大学院・地域医療学)
共同演者 陳 式儀(愛媛大大学院・先端病態制御内科学), 恩地 森一(愛媛大大学院・先端病態制御内科学)
抄録 【背景】担癌状態では骨髄由来細胞の一分画であるMyeloid-derived suppressor cell (MDSC) が増加し、免疫応答の抑制に関与している。演者らは、定常状態においてもマウス肝臓にMDSCが存在しており、肝臓における免疫寛容誘導に関与している細胞群の一つであることを報告してきた。また、臨床例において肝細胞癌で末梢血中のMDSCが増加していることを観察している。そこで、肝細胞癌を発症する高脂肪食誘導肥満マウス(NAFLDマウス)におけるMDSCの機能について解析した。【方法】NAFLDマウスモデルはC57BL/6マウスに高脂肪食を12週間与えて作成した。1) NAFLDマウスおよび通常食飼育マウス(controlマウス)の脾臓・肝臓における MDSC (CD11b+Gr1+)の細胞数をflowcytometryで解析した。2) FACSを用いてMDSCを単離した。樹状細胞とアロT細胞の共培養系にMDSCを添加し、T細胞増殖能の変化を解析した。また、抗原特異的感作リンパ球を用い、抗原特異的免疫応答の変化についても解析した。4) T細胞をMDSC存在下にCon Aで刺激し、T細胞表面マーカーとアポトーシス誘導について解析した。【成績】1) NAFLDマウス、controlマウスとも肝臓に存在するMDSCの割合は脾臓に比べて多かった。NAFLDマウスでは肝MDSCがcontrolマウスに比して有意に増加していた。2) NAFLDマウスの肝MDSCの添加により、アロT細胞の増殖誘導能は抑制された。また、抗原特異的リンパ球増殖誘導能はNAFLDマウス、controlマウスの肝MDSCで抑制されたが、その免疫応答抑制能はNAFLDマウスの肝MDSCでより強かった。3) NAFLDマウスのMDSCを添加すると、T細胞上のCD40L, CD62L, CD28の発現は低下し、PD-1, FasL, CTLA-4の発現が増加した。また、MDSC添加によりT細胞のアポトーシスをより強く誘導した。【結論】NAFLDマウスモデルでは、肝内にT細胞免疫応答を抑制するMDSCが増加していた。非アルコール性脂肪性肝疾患からの肝発癌においてMDSCによる免疫応答抑制の誘導が関与していると考えられた。
索引用語 非アルコール性脂肪性肝疾患, 骨髄由来抑制細胞