セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胃・十二指腸(症例報告/その他)4

タイトル 消P-406:

急激な経過をたどった胃蜂窩織炎の1例

演者 高畑 彩子(川崎幸病院・消化器病センター)
共同演者 堀野 誠(川崎幸病院・消化器病センター), 眞田 和賢(川崎幸病院・消化器病センター), 藤原 裕之(川崎幸病院・消化器病センター), 大前 芳男(川崎幸病院・消化器病センター), 河原 祐一(川崎幸病院・消化器病センター外科), 関川 浩司(川崎幸病院・消化器病センター外科)
抄録 【症例】63歳 男性【主訴】吐き気, 左側腹部痛. 【現病歴】5日前から感冒症状を認め内服加療をしていた. 来院当日深夜より吐き気および左側腹部の痛みを自覚し救急車で来院された. 心窩部から左側腹部に反跳痛と筋性防御を伴う強い圧痛を認め, 炎症反応の上昇も認められたため, 緊急入院となった. 【経過】入院後の腹部CTでびまん性の胃壁の肥厚を指摘された. 上部消化管内視鏡検査では, 胃粘膜は浮腫状に肥厚し, 膿性粘液が付着したびらんを多数認めた. 点滴抗生剤加療を行ったが, 入院8時間後に血圧が低下し, 急性腎不全, アシドーシスの状態になった. 再度上部消化管内視鏡を行ったところ, 胃体部の粘膜は黒色変性し, 残存粘膜の浮腫も増悪していたため, 急性壊死性胃炎を疑った. ショック状態であったため, 外科と相談し, 胃全摘を行うこととなった. 腹腔内には多量の血性腹水が貯留し, 黒色変性は胃体部前壁から後壁にかけて, また胃周囲の大網にも及んでいた. 病理所見では胃の粘膜固有層の出血と, 粘膜下層から筋層および漿膜下に著しい浮腫と滲出物を認め, 前庭部の一部に凝固壊死を認めたことから, 一部に壊死を伴った胃蜂窩織炎の診断となった. 術後腹水の培養から連鎖球菌が検出され, 起因菌と考えられた. 現在術後55日経過しているが, 腹腔内膿瘍を合併し, ドレナージ加療を行っている.【考察】胃蜂窩織炎は粘膜下層を中心に全層性に滲出性変化と炎症性細胞の浸潤, 浮腫をきたす化膿性炎症性疾患で, 粘膜損傷部からの細菌の直接侵入や, 血行性感染, 近接臓器からの波及などが成因と考えられている. 起因菌は連鎖球菌, 特に溶連菌の報告が多い. 以前より外科的切除が治療の中心であったが, 近年では抗生剤による内科的治療も報告されてきている. 本例は急激な経過をたどり, 外科的切除を行って救命した稀な経過であり, 若干の文献的考察を加えて報告する.
索引用語 胃蜂窩織炎, 溶連菌感染症