セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胃・十二指腸(症例報告/その他)5

タイトル 消P-410:

腎細胞癌術後18年に膵転移、23年に胃転移をきたした1例

演者 並川 努(高知大・1外科)
共同演者 北川 博之(高知大・1外科), 岡林 雄大(高知大・1外科), 和田 邦彦(高知大・消化器内科), 水田 洋(高知大・消化器内科), 小林 道也(高知大・医療管理学), 西原 利治(高知大・消化器内科), 花崎 和弘(高知大・1外科)
抄録 【背景】腎細胞癌は血行性転移で肺・肝・骨・脳など全身臓器に転移をきたすが、膵転移はごく少数例にみられ、胃転移は極めて稀である。また緩徐に発育する症例があり、術後10年以上での再発症例も少なくない。今回、左腎細胞癌術後23年目に胃転移をきたした症例を経験したので文献的考察を加えて報告する。【症例】患者は65歳の男性。23年前に左腎細胞癌に対して腎摘出術を施行され、18年後に膵頭部の3 cm大の孤立性転移をきたし、十二指腸温存膵頭切除術を受けていた。定期のCT検査で胃内腔に強い造影効果を有する腫瘤がみられ、内視鏡検査で粗造な表面構造で易出血性の隆起性腫瘤を認めた。PET/CT検査も含めた精査で他の病変はみられず、孤立性胃転移の術前診断で胃部分切除術により腫瘍を摘出した。2.5 × 2.0 × 1.5 cm大の軟らかい暗赤色調の腫瘍で、病理組織検査で粘膜から粘膜下層を主体に核の大小不同を認める淡明な胞体を持つ腫瘍細胞が胞巣構造を形成しながら増殖し血管成分を豊富に認め、23年前の腎細胞癌の組織像に一致した。術後は良好に経過し、3か月を経過して再発所見は認めていない。【考察】腎癌の胃転移をMEDLINEで検索し、これまでの報告21例に本症例を加えた22例について検討した。年齢中央値は68歳 (range: 48-83歳)、胃転移の大きさの中央値は3 cm (range: 1-8 cm)、胃転移の部位はU領域に6例、M領域に10例、L領域に6例であった。3年生存率は21.0%、生存期間中央値は19か月で、腎癌治療後から胃転移までの期間の中央値は6.3年であった。胃転移までの期間6.3年以上の症例は6.3年以下に比べて予後良好であった(24か月 vs. 5か月; P = 0.017)。孤立性胃転移の7例は全て切除され、多発転移の14例の切除率は35.7%であった。【結語】腎癌手術後晩期に胃転移をきたすこともあり、長期の経過観察が必要である。6年以上経過して孤立性の胃転移をきたす症例は外科的切除により良好な予後が得られる可能性がある。
索引用語 腎細胞癌, 胃転移