セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胃・十二指腸(症例報告/その他)5

タイトル 消P-411:

肺原発の転移性胃腫瘍の1例

演者 西川 敏雄(井上病院(広島))
共同演者 兵頭 剛(井上病院(広島)), 木村 幸男(井上病院(広島)), 森 雅信(井上病院(広島)), 上川 康明(井上病院(広島)), 井上 文之(井上病院(広島))
抄録 症例は82歳,男性.2009年6月他院にて右肺腫瘤を指摘された.細胞組織学的検査では確定診断には至らなかったものの,PET検査にてSUV 13.48とFDGの高集積を認め,T2N1M0 stageIIBの肺癌と診断された.また,前立腺,甲状腺にもFDGの高集積を認め,ともに悪性腫瘍が疑われた.化学療法を行っていたが希望にて2010年3月当院紹介となった.腫瘍マーカーはCEA,CYFRA,SCCの軽度上昇を認めた.胸部CTでは右肺S9/10に腫瘤を認め,またFDG-PET 検査ではSUV 13.48とFDGの高集積を認め扁平上皮癌と考えられた.前立腺,甲状腺にもFDGの高集積を認めたが,胃には異常集積を認めなかった.化学療法を開始したが状態は次第に悪化し,2011年3月からは対症療法のみの施行となった.その後肝転移が出現し,また肺腫瘤および縦隔リンパ節転移巣の増大,圧迫による食道狭窄が出現し,8月末には嚥下困難が出現したため,上部消化管内視鏡検査を施行した.検査では胸部食道に約5cmにわたって壁外よりの圧迫による狭窄を認めた.また胃体中部大弯前壁よりに中心部に潰瘍を伴う粘膜下腫瘍様の腫瘤を認めた.生検にて低分化扁平上皮癌との診断であった.免疫染色ではケラチン陽性,CK7およびCK20陰性であり,肺癌の胃転移との診断であった.胃原発の扁平上皮癌は非常に稀であり,また本症例では腫瘍が典型的な転移性腫瘍の形態をとっていたこと,PET検査にて肺,甲状腺,前立腺以外には高集積を認めずこれらのいずれかが原発巣である可能性が高いこと,肺腫瘤のFDGの集積は高度であり肺癌のうち扁平上皮癌である可能性が高いこと,扁平上皮癌の発生素地となる肺以外の部位には上部消化管内視鏡および視診上異常を認めなかったことから臨床上肺扁平上皮癌の胃転移と診断した.胃転移出現後も対症療法のみ施行している.原発性肺癌が胃に転移する頻度は少ない.また肺癌は5%前後に他臓器重複癌を合併し,そのうち胃癌の合併は30~60%をしめるとされており肺癌患者における上部消化管内視鏡検査は重要であると考えられる.
索引用語 転移性胃腫瘍, 肺癌