抄録 |
【はじめに】Pulmonary tumor thrombotic microangiopathy(PTTM)とは,肺末梢細動脈,細小動脈への腫瘍塞栓に引き続き,内膜の線維・細胞性肥厚を来たした病態である.今回われわれは,PTTMにて呼吸不全に至った1例を経験したので,剖検結果を踏まえ報告する.【症例】症例は74歳,女性.2009年10月に胃癌に対して,幽門側胃切除術(tub2,pT3,pN3b,Stage3B)を施行した.術後補助化学療法(TS-1)を行ったが,PS低下のため3クールで中止.腫瘍マーカーの上昇を認めていたが,再発巣は同定できなかった.2010年7月に全身倦怠感のため入院となった.点滴加療にて症状改善したが,第5病日になり呼吸困難が出現し増強.胸部造影CT検査で,両側下葉中心にびまん性に小粒状・樹状の陰影およびtree-in-bud patternを認め,PTTMが疑われた.急速に呼吸状態は悪化し,第8病日に永眠された.病理解剖検査にて,多数の末梢肺動脈内に,腫瘍塞栓および内膜の線維性肥厚による狭窄を認めた.一部で血栓塞栓の器質化,再疎通像も認め,PTTMとの診断に至った.【考察】PTTM患者は極めて予後不良である.しかし,早期診断による化学療法奏功例もあることから,原因不明の呼吸器症状を有する癌治療歴のある患者や担癌患者においては,PTTMを念頭においた早急な画像診断が必要と考える. |