セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胃・十二指腸(症例報告/その他)5

タイトル 消P-413:

急激に進行する呼吸不全で発症し,食道胃接合部癌によるPulmonary tumor thrombotic microangiopathyと診断された1例

演者 向 あかね(滋賀県立成人病センター・消化器内科)
共同演者 山本 修司(滋賀県立成人病センター・消化器内科), 貴田 雅也(滋賀県立成人病センター・消化器内科), 石原 真紀(滋賀県立成人病センター・消化器内科), 藤本 昌澄(滋賀県立成人病センター・消化器内科), 河合 敏秀(滋賀県立成人病センター・消化器内科), 水田 和彦(滋賀県立成人病センター・消化器内科), 関 淳也(滋賀県立成人病センター・循環器内科), 武内 英二(滋賀県立成人病センター・病理診断部)
抄録 症例は60代,男性.2日前から急激に出現した呼吸苦を主訴に近医受診.心不全と診断され利尿剤投与を受けたが,呼吸状態は急速に悪化し,精査加療目的で当院転院となった.心エコー検査で著明な肺高血圧症を認めるも,造影CTでは肺動脈血栓などは認めず,原因不明の肺高血圧症による呼吸不全と診断された.また,CTで軽度胆嚢壁肥厚と,縦隔・肺門・傍大動脈リンパ節腫大を認め,CEA 17.6 ng/ml,CA19-9 1639.9 U/mlと高値であった.上部消化管内視鏡検査では,噴門部にφ1cm程度の頂部に潰瘍を伴う粘膜下腫瘍様隆起を認め,食道胃接合部癌もしくは他臓器癌リンパ節転移の胃浸潤が疑われた.スワン・ガンツカテーテルからの肺動脈血吸引細胞診で,上皮系悪性腫瘍を疑う異型細胞を認め,腫瘍塞栓の特殊型であるPulmonary tumor thrombotic microangiopathy(PTTM)が考えられた.原発巣は特定できなかったが,症状の進行が急速であり,PTTMによる呼吸不全が疑われた事から,腺癌に対する化学療法を施行する事となった.上部消化管内視鏡検査の所見から食道胃接合部癌を,CTで胆嚢壁肥厚を認めた事から胆嚢癌をターゲットとし,転院4日目よりTS-1,5日目よりGemzarの投与を開始した.しかし臨床所見の改善は見られず,転院8日目に死亡した.病理解剖の結果,胃・噴門部の病変は粘膜下への浸潤を主体とする低分化型腺癌であった.肺動脈末梢では,噴門部腫瘍と同様の低分化型腺癌による多発微小腫瘍塞栓と,小動脈の繊維性内膜肥厚,血栓の器質化,再疎通といった所見がみられた.以上より食道胃接合部癌を原発巣とするPTTMと診断した.PTTMは比較的まれな病態であり,文献的考察を加えて報告する。
索引用語 食道胃接合部癌, Pulmonary tumor thrombotic microangiopathy