セッション情報 |
シンポジウム8(消化器病学会・肝臓学会・消化器がん検診学会合同)
NASHからの発癌:基礎と臨床
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タイトル |
肝S8-4:糖尿病モデルマウスにおける肝遺伝子発現と脂肪肝の病態進展との関連
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演者 |
吉嶺 陽造(鹿児島大・消化器疾患・生活習慣病学) |
共同演者 |
宇都 浩文(鹿児島大・消化器疾患・生活習慣病学), 坪内 博仁(鹿児島大・消化器疾患・生活習慣病学) |
抄録 |
【目的】非アルコール性脂肪肝炎は糖尿病や脂質異常などの生活習慣病を背景に脂肪肝を発症し,酸化ストレス等によって炎症や肝線維化が進展する病態であるが,その進展因子は十分明らかではない.本研究では1型糖尿病モデルマウスであるSTAMマウスと2型糖尿病モデルマウスであるdb/dbマウスを用いて,高血糖に伴う脂肪肝の病態に,高脂肪食負荷が及ぼす影響および病態進展に関連する肝の遺伝子発現に着目して解析したので報告する. 【方法】C57B6Nマウスにstreptozotocinを接種して膵機能を低下させ,4週齢より高脂肪食もしくは通常食を投与したマウス(STAM-F群とC群)を作成した.また5週齢より高脂肪食もしくは通常食を投与したdb/dbマウス(db/db-F群とC群)も用いて検討した.【成績】(1)血糖値とALTは,STAMとdb/dbマウスのいずれも通常食投与群と比し高脂肪食投与群で高値であった.血清インスリンはSTAM群ではいずれも非常に低値であったが,db/db 群はSTAM群よりも高値で,特にdb/db-C群はdb/db-F群よりも高値であった.(2)STAM-F群は顕著な脂肪肝を認めたが,STAM-C群では認めなかった.一方,db/dbマウスは両群で高度の脂肪肝を認めた.(3)18週齢のSTAM-F群はSTAM-C群よりも有意に肝線維化およびHSP-70染色陽性の肝腫瘍形成や腫瘍多発化を認めた.一方,25週齢までの検討では,db/db-F群はdb/db-C群よりも肝線維化はやや進展していたが,db/db群はいずれも肝腫瘍形成はなかった.(4)STAM-F群はSTAM-C群よりもSptlc3,Mmp13,Grip1,Cxcl14の肝遺伝子発現が有意に亢進し,特にSptlc3の遺伝子発現の差は顕著で経時的な上昇も認めた.一方,db/db-F群ではdb/db-C群よりGrip1,Sptlc3の遺伝子発現量は増加していたが,db/db-F(25週)のGrip1とSptlc3の肝遺伝子発現はSTAM-F(18週)よりも低値であった.【結論】インスリン分泌の有無に関わらず,高脂肪食は糖尿病モデルマウスの脂肪肝の病態増悪因子であり,肝からのSptlc3とGrip1の遺伝子発現は肝線維化や肝発癌に関連する可能性がある. |
索引用語 |
NASH, 糖尿病 |