セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

十二指腸2

タイトル 消P-424:

当院で経験した上腸間膜動脈症候群の2例

演者 竹下 枝里(国立嬉野医療センター・消化器内科)
共同演者 白石 良介(国立嬉野医療センター・消化器内科), 武岡 陽介(国立嬉野医療センター・外科), 有尾 啓介(国立嬉野医療センター・消化器内科), 角川 淑子(国立嬉野医療センター・消化器内科), 荒木 政人(国立嬉野医療センター・外科), 柴崎 信一(国立嬉野医療センター・外科), 綱田 誠司(国立嬉野医療センター・消化器内科)
抄録 【はじめに】上腸間膜動脈(以下SMA)症候群は,十二指腸水平脚がSMAと大動脈や脊椎の間で圧迫され通過障害を生じ,十二指腸の閉塞症状を来す疾患である.今回われわれは異なる機序で発症し,いずれも保存的に軽快したSMA症候群の2例を経験したので報告する.
【症例1】87歳男性.身長152cm,体重32kg.1か月で3kgの体重減少あり.肺炎および食欲不振の精査加療中,上行結腸癌を認めたため右半結腸切除術を施行.高齢のためリンパ節郭清はD1に止めた.術後7日目に腹満・腹痛を認めCTおよび消化管造影でSMA症候群と診断した.胃管挿入では改善が得られず減圧と栄養のためW-EDチューブを用いた.誤嚥性肺炎や偽膜性腸炎の合併を認めたが診断から50日目に軽快した.
【症例2】29歳女性.身長165cm,体重43kg.生来健康.体重変化なし.食後の嘔気・強い上腹部痛のため受診.腹部CTで十二指腸水平脚部の不完全閉塞および同部より口側消化管の著明な拡張を認めた.SMA症候群を疑い胃管挿入し保存的治療で軽快した.後日消化管造影および内視鏡検査を施行し確定診断した.
【考察】SMA症候群の発生原因として,若年者では急激な体重減少や神経性食思不振症が多く,高齢者では手術後が多いとされる.症例1では,右半結腸切除(D1)によるSMA分岐角の減少は考えにくく,高齢に加え慢性的な肺疾患,担癌状態による体重減少が誘因になったと考えられた.術中所見でも内臓脂肪はほとんど認めなかった.症例2は下垂胃のためか日常的に経口摂取量が5,000kcal/日を超えていたがBMI15と過度の痩せ型であり稀なケースと考えられた.体重増加は期待できず,食事制限と左側臥位や胸膝臥位など食後の体位変換の励行で再発なく経過している.
【結語】SMA症候群は比較的稀な疾患であるが次第に報告例が増加している.上腹部不定愁訴や腹部手術例では,SMA症候群を鑑別疾患として診断治療にあたる必要があると考えられた.
索引用語 上腸間膜動脈症候群, 十二指腸