抄録 |
近年の生活習慣、食事習慣の欧米化の加速により、本邦においてもNASH/NAFLDの患者が著増している。NASH/NAFLDは、過食・運動不足などを背景にした肥満などのメタボリック症候群をベースにするものが多く、単純性脂肪肝から、肝硬変、肝がんまで幅広い病態を含むものである。肥満の増加に比例して、検診などで脂肪肝と診断される患者数は増加していて、成人人口の30~40%が脂肪肝と指摘される。これは欧米だけでなく、本邦においても公衆衛生上の大きな脅威になりつつある。NASH/NAFLDは、一つの疾患名ではなく、様々な病態を表す症候群と理解され、その診断・治療・疫学・病態の研究が活発に行われている。診断に関しては、いまだにgolden standardは組織診断に依存しており、臨床の場では対応に苦慮する場合もある。各種の血液マーカーやスコアー化による診断の試みがなされているが、最終的な結論には至っていない。また、治療法に対する研究も盛んに行われて多くの臨床研究や治験のデータが出始めているが最終結論にはほど遠いのが現状であろう。そのような混沌とした現状にあるNASH/NAFLDの領域において、今回、ガイドラインの策定が行われている。疫学・診断・治療・予後合併症・病態などの分野に分け、エキスパートの先生方に作成委員・評価委員に就任頂き来年の刊行を目指して文献検索、文献の取捨選択、エビデンスの評価、推奨度の評価を行っている。今回のガイドラインで特徴的なことは、既に国際的なスタンダードと見なされているGRADEシステムを用いてエビデンスレベルの評価をして、それをベースにして推奨グレードを決定することにある。約100題のclinical questionに対して、適切なステートメントを出し、臨床の場で役に立つガイドラインを策定することを目標としている。 |