抄録 |
【目的】近年、NSAIDsは胃潰瘍のみならず小腸にも出血、びらん、潰瘍などの粘膜傷害を惹起させることが明らかとなっている。胃潰瘍にはプロトンポンプインヒビター等が適用されるが、小腸粘膜傷害の治療戦略は未だ確立されていない。コンブ由来の多糖類であるアルギン酸ナトリウム(AL-Na)を主成分とするアルロイドG内用液5%は、胃粘膜への付着による粘膜保護作用やフィブリン形成促進による止血作用を有し、上部消化管潰瘍、逆流性食道炎或いは胃生検出血等に適用される。またAL-Naをはじめとする粘性多糖類は、下部消化管における粘液産生作用1)や腸上皮細胞の透過性抑制作用2)が報告されている。これらのことから、AL-Naは胃粘膜傷害に加え、小腸粘膜傷害にも有効であることが予想される。本検討においては、NSAIDsにより小腸傷害を惹起させたラットを用い、AL-Naの効果を検討した。【方法】雄性SDラットにインドメタシン10mg/kgを経口投与し、24時間後に小腸を摘出して粘膜傷害を評価した。AL-Na(250もしくは500mg/kg)はインドメタシン投与30分前および6時間後に経口投与した。また、陽性対照としてレバミピド(100mg/kg)を同様に投与した。【成績】AL-Naは、(1)インドメタシンによる小腸傷害およびミエロペルオキシダーゼ活性増加を抑制した。(2)インドメタシンによる赤血球、ヘモグロビンおよびヘマトクリット値の減少を抑制した。(3)インドメタシンによるムチン分泌の減少を抑制した。【結論】AL-NaはNSAIDs小腸傷害ラットに有効であった。即ち本検討の結果は、アルロイドG内用液5%が、NSAIDs小腸粘膜傷害の治療に有用である可能性を示唆するものである。なお本報告においては、その作用機序についても言及したい。1)Barcelo A et al., Gut. 2000, 46(2):218-224.2)Deng GY et al., Res Exp Med. 1999, 199(2):111-119. |