セッション情報 シンポジウム8(消化器病学会・肝臓学会・消化器がん検診学会合同)

NASHからの発癌:基礎と臨床

タイトル 消S8-6追:

肥満・高血圧発症ラットを用いた新規NASH肝発癌モデルの作製 -緑茶カテキンEGCGはNASH・高血圧に関連した肝腫瘍形成を抑制する-

演者 河内 隆宏(岐阜大・消化器病態学)
共同演者 清水 雅仁(岐阜大・消化器病態学), 森脇 久隆(岐阜大・消化器病態学)
抄録 【目的】近年、高血圧症と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の関連が報告されているが、前者が肝発癌に及ぼす影響については明らかにされていない。今回我々は、高血圧、肥満、糖尿病を発症するSHRSP.Z-Lepfa/IzmDmcr(SHRSP-ZF)ラットを用いて新規NASH関連肝発癌モデルを作製し、緑茶カテキンEGCGによる肝腫瘍形成抑制効果を検討した。【方法】7週齢の雄SHRSP-ZFラットとWKY/Izmラット(非肥満・正常血圧対照群)を、高脂肪食とCCl4(週2回腹腔内注射)で8週間処理するとともに0.1%EGCGを飲水投与し、肝前癌病変、肝脂肪化および線維化に及ぼす影響について検討した。【結果】対照群と比較しSHRSP-ZF群において、高血圧、肥満、インスリン抵抗性(高血糖、高インスリン血症)、血清脂質異常(血清総コレステロール、中性脂肪、遊離脂肪酸の上昇)、血清アディポネクチンの低下、レプチンの上昇、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6)の上昇、アンギオテンシン2の上昇、酸化ストレスの亢進(血清d-ROM、肝組織TBARSの上昇)、肝MMP-2、MMP-9、TIMP-1、TIMP-2、α-SMA、pro-collagen、TGF-β1、VEGF、CD31、PAI-1、MCP-1 mRNAの発現上昇とともに、肝脂肪化および線維化の亢進と、GST-P陽性肝前癌病変の有意な増加を認めた。一方、EGCG投与によってこれらの分子異常は改善し、肝前癌病変の発生と肝線維化は有意に抑制された。【結語】高脂肪食とCCl4投与を行ったSHRSP-ZFラットは、高血圧、肥満、インスリン抵抗性、脂質異常、酸化ストレスの亢進、肝線維化および脂肪化を背景に肝前癌病変を多発したことより、新規NASH関連肝発癌モデルとして有用と考えられた。また、緑茶カテキンがNASHに起因する肝線維化および肝腫瘍形成を抑制する可能性が示唆された。
索引用語 NASH, 肝発癌