セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

小腸(臨床)2

タイトル 消P-447:

胆汁排泄障害時の脂質吸収障害に対する卵黄レシチン乳化液の効果

演者 明石 哲郎(済生会福岡総合病院・内科)
共同演者 武藤 彩乃(キユーピー(株)研究所), 江崎 充(済生会福岡総合病院・内科), 高橋 俊介(済生会福岡総合病院・内科)
抄録 【目的】胆汁排泄障害時は脂質の吸収障害を生じる。経腸栄養剤のジャネフK-2Sは下痢改善の報告があり、我々の検討でも経腸栄養剤に起因すると考えられる下痢症例で平均2.7日と早期に改善認めた。K-2Sの乳化剤である卵黄レシチンを使用した乳化液が人工胃液中でも乳化が安定し、下痢改善に関与していると考えられている。卵黄レシチンによる乳化は胆汁排泄障害時の脂質吸収に有効な可能性も考えられ、乳化剤の違いによる脂質吸収の影響を健常時と胆管結紮ラットを用い比較した。また手術不能胆嚢炎症例の外瘻法でドレナージ施行中に卵黄レシチン配合経腸栄養剤投与した例の検討も加える。【方法】6週齢SD系雄ラットを卵黄レシチン群、大豆レシチン群、合成乳化剤群の3群にわけ、各種乳化液を10g/kg体重毎、胃ゾンデを用い単回投与した。投与前、投与後2、4、6、8時間目に尾静脈より採血し、血清トリグリセリド(TG)を測定した。約1週間後、同ラットに胆管結紮手術を施し、同様に単回投与を行い、経時的に血清TGを測定した。【結果】健常時の血清TGの濃度-時間曲線下面積(IAUC)は卵黄レシチン群、大豆レシチン群、合成乳化剤群の3群間で差異は認めなかった。胆管結紮時の血清TGは卵黄レシチン群が投与後2時間目で合成乳化剤よりも有意に高値を示し、投与後2時間目、4時間目で大豆レシチン群よりも有意に高値であった。またIAUCにおいても卵黄レシチン群が大豆レシチン群と比較して高値傾向(p=0.05)を認めた。症例は3週間の経口摂取を行った。量は100~450ml/日。体重は1.2kg増、アルブミン、総コレステロールは上昇傾向であった。長期では味に対する飽きが認められた。【結論】胆汁排泄障害時に卵黄レシチンの乳化液が他の乳化剤を使用した乳化液よりも脂質吸収に優れていた。卵黄レシチン配合経腸栄養剤は閉塞性黄疸時の減黄不良例や術前の外瘻例での栄養改善に寄与する可能性が考えられた。臨床に用いるにあたり経口摂取では形状、味覚の多様化などの工夫も必要と思われた。
索引用語 卵黄レシチン, 脂質吸収