セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

小腸(症例報告)2

タイトル 消P-457:

陽イオン交換樹脂の単独関与が病理学的に証明された回腸狭窄の一例

演者 伊東 竜哉(札幌医大・1外科)
共同演者 加藤 総介(札幌社会保険総合病院・内科・消化器科), 内山 素伸(札幌医大・1外科), 村上 武志(札幌医大・1外科), 沖田 憲司(札幌医大・1外科), 古畑 智久(札幌医大・1外科), 平田 公一(札幌医大・1外科)
抄録 陽イオン交換樹脂によるカリウム吸着療法は、高カリウム血症の治療として一般に広く行われている。しかし、まれな合併症として腸炎や腸管穿孔が指摘されており、使用中には消化器症状の発現に留意する必要があるが、それらに対する陽イオン交換樹脂の直接関与はいまだ証明されていない。今回我々は、陽イオン交換樹脂であるポリスチレンスルホン酸カルシウムの服用単独により、回腸狭窄を来した症例を経験した。症例は70歳代男性。慢性腎不全による高カリウム血症に対し、3年前よりポリスチレンスルホン酸カルシウムを服用していたが、2か月前に突如腸閉塞を来し入院。精査にて回腸末端部付近に高度狭窄を認め、同部位の生検にてポリスチレンスルホン酸カルシウムの結晶が粘膜下に検出された。なお、腸閉塞の発症までには便秘は生じておらず、ソルビトールの服用も行っていなかった。狭窄は非常に高度で、保存的治療のみでの改善得られず、手術施行となった。手術所見上は回腸に5cm長の狭窄部位を認めるものの、腫瘍性病変や虚血性変化、癒着等は全く認めず、回腸部分切除術を施行した。病理学的には、粘膜面の潰瘍を伴う炎症性肉芽腫であり、粘膜下層にはポリスチレンを異物として多数認め、原因物質と最終診断した。陽イオン交換樹脂服用によるまれな合併症として腸管穿孔や狭窄が指摘されているが、これまでの報告では、便秘の合併による樹脂の滞留や、かつて頻繁に併用されていたソルビトールによる直接傷害が原因となるものの、陽イオン交換樹脂そのものは単独原因ではないとされていた。しかし本症例では、回腸狭窄に対する陽イオン交換樹脂の単独関与が病理学的に初めて証明されたため、文献的考察を含めて報告する。
索引用語 陽イオン交換樹脂, 腸管狭窄