セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

小腸(症例報告)2

タイトル 消P-460:

出血コントロールに難渋した血管肉腫の一例

演者 前屋舖 千明(国立国際医療研究センター・消化器科)
共同演者 永田 尚義(国立国際医療研究センター・消化器科), 朝山 直樹(国立国際医療研究センター・消化器科), 野崎 雄一(国立国際医療研究センター・消化器科), 櫻井 俊之(国立国際医療研究センター・消化器科), 池原 久朝(国立国際医療研究センター・消化器科), 草野 央(国立国際医療研究センター・消化器科), 横井 千寿(国立国際医療研究センター・消化器科), 小島 康志(国立国際医療研究センター・消化器科), 小早川 雅男(国立国際医療研究センター・消化器科), 後藤田 卓志(国立国際医療研究センター・消化器科), 柳瀬 幹雄(国立国際医療研究センター・消化器科)
抄録 【症例】72歳、男性。職業:建築士。既往歴:高血圧症。
黒色便、出血に伴うふらつき症状を主訴に受診。Hb:3.7 g/dlと著明な貧血を認めたため入院となった。上部内視鏡検査を施行し、胃、十二指腸に複数の鮮やかな発赤調の隆起性病変を認めた。しかし、生検病理像で有意な所見を認めなかった。CTおよびPET-CTでは肝、脾、胸腰椎に複数の腫瘤を認めた。最もサイズの大きかった脾臓の腫瘤から超音波内視鏡下穿刺生検(EUS-FNAB)を行い、生検病理像で脾臓血管肉腫と診断した。消化管病変診断のために再度内視鏡検査(4回目)を施行し、生検病理像から胃血管肉腫と診断した。脾破裂予防のため第58病日に腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した。カプセル内視鏡とバルーン内視鏡で空腸と回腸にも同様の病変を認めたため、消化管出血コントロール目的に小腸部分切除術や血管塞栓術を施行したが奏功せず、連日輸血を要した。第103病日に出血性ショックで死亡し、病理解剖が行われた。胃、十二指腸、空腸、回腸、肝臓、膵臓、骨に血管肉腫を認め、胸腹膜に播種結節を認めた。死因は播種結節からの胸腹腔内への出血および肝病変の破裂と考えた。
【考察】血管肉腫は稀な疾患であり、特に消化管の血管肉腫は数例しか報告がなく、本症例は胃や十二指腸に病変を認めた世界初めての報告例である。病因は塩化ビニル、ヒ素などへの暴露が示唆されており、本症例も長年の建築業に携わっていた経歴がありこれら化学物質に暴露されていた可能性がある。脾臓血管肉腫は左上腹部痛を8割に認めると言われているが、本症例は腹痛は認めなかったが、黒色便の精査から診断に至った。脾臓血管肉腫の診断は試験開腹や脾臓摘出術が唯一の方法と言われていたが、本症例ではEUS-FNABと頻回の内視鏡下生検が診断に有用であった。
【結語】出血コントロールに難渋した血管肉腫多臓器病変の一例を経験した。
索引用語 血管肉腫, 出血